第3章 反逆の刃を空にかざす
私たちの言葉を聞いたミカサは、冷静さを取り戻し、“すみませんでした…”と小さな声で謝ってくる。
その一言に、場の緊張が一瞬和らぐ。
そしてイアンは、何をすべきなのかを決め、意を決して口を開く。
口元に固さが残るが、その声には先ほどより確かな響きがあった。
「リコ班は後方の12m級を殺れ!ミタビ班と俺の班で前方の二体を殺る!」
命令が空気を切り裂く。
短い語句に、生き残るための全てが詰められている。
「なんだって!?」
リコの驚きの声が即座に返る。
計画の重さが、瞬間的にみなにのしかかる。
イアンの作戦を聞いたリコはありえないという顔をしながらイアンに詰め寄る。
眉間に皺を寄せ、唇を噛む。
恐怖が怒りへと変わる瞬間だ。
しかし、指揮を託されたのはイアンだ。
責任の重みが彼の肩に落ちる。
周囲の視線が一斉に彼へ集まる。
リコ達は、黙って命令に従うしかない。
それは誇りではなく、残酷な現実の受容だった。
誰もが歯を食いしばる。
イアンはきっとこう思っているはずだ、イェーガーを置いては行けないと。
その信念が、彼の決断を支えている。
イアンの言葉を聞いたリコは息を呑み込む。
胸の奥で、誰かの顔や声がちらつき、決意と恐怖が交錯する。
「作戦を変える!イェーガーを回収するまで彼を巨人から守る!彼は人類にとって貴重な可能性だ!簡単に放棄出来るものでは無い!」
イアンの声は硬く、断固としていた。
周囲の空気が再び引き締まる。
「あの出来損ないの人間兵器の為に今回だけで数百人は死んだだろうに!あいつを回収してまた似た様な事を繰り返すって言うの?!」
皮肉と怒りの混じる声が返る。
疲弊と憤りが人々の声を歪ませる。
「そうだ、何人死ようと何度でも繰り返す!」
イアンの宣言は、冷たくも崩せない鉄のように硬い。
彼の瞳にはもう諦めはない。