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【進撃の巨人】救世の翼【加筆修正完了】

第3章 反逆の刃を空にかざす


私はエレンの様子を横目で見るが、まったく動く気配が見られない。


胸の奥に鈍い不安が広がる。
風が顔を撫でるが、それが慰めにはならない。



(死んでいる…ということはないよな?)



頭の片隅で繰り返す問いに、体が小刻みに震える。


まぁ多分大丈夫だろう、と思いながらも精鋭班たちの会話を聞く。

声の輪郭がいつもより鋭く、言葉は砕けやすくなっている。
ミカサも険しい顔をしながら聞いている。



「何迷ってんだ!指揮してくれよ、イアン!お前のせいじゃない!はなっから根拠の無い希薄な作戦だった!」



ミタビの声が荒れ、苛立ちと恐怖が混ざって震える。
言葉の端に、これまで抑えてきた焦燥が滲む。


ミタビの言う通り、イアンのせいではない。
そんなの、みんな分かっている。


だが、理屈が分かっても胸の動揺は消えない。
集団の不安は静かに空気を重くする。


ミタビの言葉を聞きながら、イアンは何をすべきか迷っている様子だ。

額に薄く汗を浮かべ、視線が何度も行き場を失っている。



「試す価値はあったしもう充分試し終えた!いいか?俺たちの班は壁を登るぞ!」



ミタビが言い放ち、歩幅を上げて壁へ向かう。
決意の音が地面に落ちる。


そう言って壁に向かって歩き出すミタビの後ろを、剣を持ってミカサは追いかけようとする。


その姿に、若さと刹那の覚悟が滲む。

私は彼女の腕を掴んで必死に止めようとする。


指先に伝わる小さな震えが、彼女の内側の熱量を伝える。
こんな所で、人間同士の殺傷事件を起こしたくはない。



「待て!落ち着け…アッカーマン」



イアンの声は低く、抑えようとする心が震える。
彼女の瞳が一瞬揺れ、わずかな迷いが戻る。



「私たちを困らせないで」



私は小さく、しかし冷たく呟いた。
謝罪の声は風に溶け、次第に彼女は平常を取り戻す。
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