第3章 反逆の刃を空にかざす
「それにしても副兵士長、そんな薄い服装で大丈夫なのか?」
後ろを走っていたミタビが心配そうに声をかける。
休暇中に巨人が出現するとは想定外だったため、私の服装は軽装に過ぎた。
「大丈夫」
「背に大きな切り傷があるが、それは大丈夫なのか?」
「…まぁ痛いが」
背中には、瓦礫を掠ってできた深い切り傷が走っている。
戦闘に支障をきたすほどではないものの、触れると鈍く痛む。
だが、時間と共に治るだろう。
「私のことは気にしなくて良い。それよりも、作戦に集中しよう」
ミタビはそれ以上深入りせず、黙って前を向き走り出す。
その背中には、覚悟と信頼が同時に刻まれているように見えた。
巨人が現れて以来、人類は一度も勝利を収めていない。
巨人が進めば、人類は退き、領土を奪われ続けてきた。
絶望は日常のように重くのしかかり、胸を締め付ける。
だが、今この作戦が成功すれば、人類は初めて巨人から領土を奪い返すことに成功する。
その瞬間、歴史は動き、希望は現実となるだろう。
(私は幸運だな…もしかしたら、人類が巨人に初めて勝利する瞬間を、この目で見られるのだから)
胸の奥で鼓動が早まる。
緊張と期待が入り混じり、呼吸は荒くなる。
だが、同時に冷静さも必要だ。
勝利の瞬間を目撃するだけでは意味がない。
自らもその勝利を作り出す一部でなければならない。
常に勝利を渇望してきた調査兵団がこの場にいないのは残念だが、その思いを受け継ぎ、私たちは進まねばならない。
目の前には、エレンが運ぶべき未来と、それを守る仲間の姿がある。
私は息を整え、彼と共に次の一歩を踏み出した。