第3章 反逆の刃を空にかざす
「ままごとやってんじゃないぞ!イェーガー!」
「そんなつもりは…」
「お前みたいな甘えた餓鬼に、人類の命運をかけないとならんとなは!」
リコとミタビの言葉が気に入らなかったのか、ミカサは二人を睨む。
仮にも上官の立場の人にそういう態度を取るな、という思いを込め、ミカサの頭を軽く叩く。
私の言いたいことが伝わったのか、ミカサは少し申し訳なさそうに頭を下げた。
「もうすぐ岩までの最短ルートだから、そろそろふざけるのはよしてくれ」
私の言葉に、二人は緊張感を取り戻し、気を引き締めた顔になる。
今見える限りでは巨人はいない。
恐らく、皆が上手く囮をやっているのだろう。
「一つ言っておくぞ、イェーガー」
エレンはリコに目をやった。
「この作戦で、決して少なくはない兵が死ぬことになるだろう。あんたの為にな。
それは私達の同僚や先輩や後輩の兵士達で…当然、兵士である以上死は覚悟の上だ。
だがな…彼らは物言わぬ駒じゃない。
彼らには名前があり、家族がいる。その分だけの想いがある」
リコは言葉を切らずに続ける。
走る足音と風の音の中で、その声は緊張感を帯び、エレンの胸に重く響いた。
「訓練兵時代から同じ飯を食っている奴もいる。
そんな彼らも、今日あんたの為に死ぬことになるだろう」
エレンは走りながらも、リコの言葉に目を伏せる。
肩越しに背後の仲間たちを想像する。
作戦の要として背負う責任の重さが、胸の奥で確かに圧し掛かる。
「その事を甘えた心に刻め!そして死ぬ気で責任を果たせ!」
「はい!」
「私も全力でサポートをする」
“だから頑張れ”
私はそっとエレンの肩を叩く。
微かな温もりが、彼の緊張を少しだけ和らげる。