第3章 反逆の刃を空にかざす
隣にいたアルミンを見れば、彼は顔色を悪くさせていた。
…彼の知り合いも、あの作戦の犠牲者になっただろうか。
ミカサはアルミンの様子を見て、彼の拳を包んだ。
“大丈夫”と励ましている様にも見えた。
私はそれに深く関わろうとはしなかった。
「わしを含め、人類全てに罪がある!ウォール・マリアの住人が少数であったが為、争いは表面化しなかった!しかし今度はどうじゃ!」
このウォール・ローゼが破られれば、人類の2割の口減らしをするだけではすまない。
ウォール・シーナの中だけでは、残りの人類の半分も養えることは不可能。
人類が滅ぶのならそれは、巨人に食い尽くされるのではない。
人間同士の殺し合いで滅ぶ。
最悪な未来が訪れることになる。
「我々はこの壁の中で死んではならん!どうかここで、ここで死んでくれ!」
ピクシスの話が終わると、辺りは静まり返った。
その悲劇は、誰も望んでいない。
その結末だけは、何としてでも避けたい出来事だ。
だから皆、司令の言葉に反論などしなかった。
「揃ったようじゃの」
司令の周りに集まっていたのは、駐屯兵団精鋭部隊の中でも上の立場の者だ。
イアン・ディートヒッリ、リコ・ブレツェンスカ、ミタビ・ヤルナッハ、そして私。
「諸君らの任務は一つじゃ。エレン・イェーガーの護衛に付き、作戦過程で起きるあらゆるリスクを排除する。本作戦最も危険かつ難度の高い任務じゃろう。諸君らの働き遺憾によって、人類の命運が決まると言っても過言ではない」
「司令…一つよろしいでしょうか?」
白髪に眼鏡をかけた小柄な女性、リコがピクシスに問いかける。
司令はリコの方を向き“何じゃ”と言った。
「人間兵器とやらは、本当に機能するのでしょうか?」
「よせ、リコ」
「あなただって疑念を抱いてるんでしょう?」
「司令…この作戦はエレン・イェーガーという恐ろしく曖昧な根拠の上に成り立っています」
彼らも、この作戦における危険性を理解している。
もしエレンが機能しなければ、多くの兵が無駄に死ぬことを。
三人の発言を聞いた司令は困った様な顔をして唸っていた。
「困ったのう…お主らそんなに巨人に負けるのが好きか?」