第3章 反逆の刃を空にかざす
司令は変人だと兵団内ではよく噂されている。
しかし、あれでも人類の最重要句防衛の全権を任された方。
なぜその地位に就くことができたのか。答えは簡単だ。
彼がそれ相応の結果を出してきたからだ。
「わしが命ずる!今この場から去る者の罪を、免除する!」
「…ッ」
アルミンはあり得ないという顔をしていた。
しかし、一緒にいた兵士たちは特段驚いてはいない様子。
「一度巨人の恐怖に屈した者は、二度と巨人に立ち向かえん!巨人の恐ろしさを知った者はここから去るがいい!」
その言葉を聞いて目に浮かぶのは、新兵が壁外調査に出て、初めて巨人に遭遇した時の恐怖の顔。
あの子は、自身が持っていた剣も、唯一巨人に対抗できる立体機動も使わずに死んでいった。
あの子は恐怖に屈してしまい、心臓を捧げることも叶わなかった。
「そして、その巨人の恐ろしさを自分の親や兄弟、愛する者に味合わせたい者も、ここから去るがいい!」
その言葉を聞いて立ち去る足を止めた兵士たちは、どれ程居たのだろうか。
私たちが居る場所からは兵士たちの様子は見えない。
ただ、司令の言葉には大きい意味が込められていた。
だから、重かった足取りを前に戻した者は多くいただろう。
それだけは、何故か分かってしまうのだ。
「4年前の話をしよう!ウォール・マリア奪還作戦の話じゃ!」
その言葉が聞こえ、今まで作戦立案の為に下を見ていた顔が上がる。
周りにいた者も同様に顔をあげた。
それ程、あの出来事は5年前の惨事と同じくらい心に残っている、胸糞悪いことだった。
皆分かっている…奪還作戦と言えば聞こえはいいが、要は政府が抱えきれなかった大量の失業者の口減らしだった。
皆がその事に口を詰むんでいるのは、彼らを壁の外へ追いやったおかげで、私たちがこの狭い壁の中を生き抜く事が出来たからだ。