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【進撃の巨人】救世の翼【加筆修正完了】

第3章 反逆の刃を空にかざす


そして司令は立ち上がり、迷いのない動作で手を上げた。


その姿は、まるで嵐の中でも一歩も退かない老将のようで、私の胸に熱いものが込み上げる。



「参謀を呼ぼう!作戦を立てようぞ!」


「え…!そんな…いくらなんでも皮算用でもない思い付きなのに…
いきなり実用するなんて…!」



動揺するアルミンの声が震えていた。


彼の不安はもっともだ。
だが、ピクシス司令の瞳には確信が宿っている。

あの男は“希望”という名の無謀を、何度も現実に変えてきた人間だ。



「俺もそう思ったが…でもその判断を訝っても意味が無い」



エレンが静かに言う。
その声には恐怖よりも、決意が勝っていた。



「エレンの言う通りだ。

ピクシス司令は今の私達に見えないものを見ようとしているのだろう」



私の言葉に、アルミンは“見えないもの?”と小さく呟いた。

その呟きはかすかだったが、確かに届いていた。


私はゆっくりと頷く。



「…恐らく、作戦を実行する以前に根本的な問題がある。司令はその現状を正しく認識してる」


「つまり…?」



アルミンの瞳が揺れる。


私は深く息を吸い、崩れかけた街を見下ろした。

焼けた家屋の匂い、
血に染まった石畳、
壁の影に転がる折れた剣。


人間の“恐怖”が、まるで見えない霧のように街を覆っている。



「敵は、巨人だけではないという事だ」



私の言葉に、アルミンは息を呑んだ。

そう——今、最も危険なのは巨人ではない。
“恐怖”と“絶望”に飲み込まれた兵士たち自身だ。



「時は一刻を争う」



焦燥が胸を締め付ける。
あの鎧の巨人が、再び姿を現す可能性だってある。

何もしなければ、全てが飲み込まれてしまう。
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