第3章 反逆の刃を空にかざす
短く鋭い一声がその声を切った。
近くにいた駐屯兵の言葉を遮り、自分の世界に入り込み、何かを考えている様子だ。
彼の様子がおかしく見え、私はアルミンの元へと行く。
「アルミン…!」
私の声は小さく震え、背後を固める兵の視線が突き刺さる。
アルミンはキッツの様子を見て放心状態のままだった。
どうか、間に合えッ!
「よさんか」
その時、この殺伐とした雰囲気には似合わない声が聞こえてきた。
その声に心当たりのあった私は、声の発生源へと顔を向けた。
「相変わらず、図体の割には小鹿のように繊細な男じゃ…」
皮肉混じりの静かな声音が場の緊張を一瞬だけほぐす。
隊長である筈の彼に軽々しく言う人物に、私はやっと来たのかと少し思ってしまった。
「ピクシス司令…」
駐屯兵団最高責任者、ドット・ピクシスが、この非常事態にようやっと姿を現したのだった。
【ドット・ピクシス】
彼は、トロスト区を含む南側領土を統括する最高責任者であり、人類の最重要句防衛の全権を託された人物だった。
そして、私が思うかぎり、調査兵団の人達と肩を並べる程の変人だと思っている。
「やはり見当たらんか…超絶美少女の巨人になら食われてもいいんだがのう」
実際に、生来の変人とも兵団内で知られている。
人類の危機が迫っているというのに、呑気に過ごしている姿に、呆れが出そうである。
だが、司令がちゃんとした人だとは分かっている。
じゃないと、最高責任者なんて務まらないからだ。
「そうか…その地下室に行けば、全てが分かると」
「はい…信じてもらえますか?」
エレンは座ったまま不安そうにピクシスに聞いた。