第3章 反逆の刃を空にかざす
命令の声は震え混じりで、砂埃が舞う広場に鋭く響いた。
兵の顔が引き締まり、剣と銃が一斉に構えられる。
「なっ?!」
驚きの声がいくつか漏れる。緊張で空気が張りつめる。
「奴らの行動は常に我々の理解を超える!人間に化け、人間の言葉を労し、我々を欺く事も可能だと言うわけだ!これ以上奴らの好きにさせてはならない!」
隊長の怒声は恐怖を煽り、駐屯兵たちの表情をさらに険しくした。
刃先がこちらへ向けられる感触が、皮膚の裏側を冷たく走る。
(…考える事を完全に放棄してる…考える事が怖いんだ。怯えた子鹿め)
私の胸の内に冷たい観察が湧く。
周囲の兵は合理的思考を手放し、恐怖という単純な感情で動いている。
アルミンはキッツの言葉を聞いて、説得できるような状態ではないと感じ、どうしようという目でこちらを見てきた。
だけど、私はさっき言ったようにアルミンを信じると言った。
そして、それはエレンとミカサも同じだ。
エレンとミカサと私は、“信じている”という意味で、力強く頷いた。
(もし何かあった時は、私が体を張って守る。だから、どうか説得してくれ)
祈るような覚悟が胸を満たす。
言葉には出さないが、その決意がアルミンの背中を押すはずだと信じている。
アルミンは私たちの反応を見て、行動に出た。
アルミンは敬礼をする。
「私は永遠に、人類復興の為なら心臓を捧げると誓った兵士!その信念に従ったすえ、命が果てるなら本望!彼の持つ巨人の力と残像する兵力が組み合わされば、この街の奪還も不可能ではありません!」
アルミンの声は小さな体に似合わぬ太い響きを持ち、周囲の空気を一瞬で掻き変えた。
彼の瞳は炎のように揺れ、聞く者の胸を突く。
アルミンの言葉に驚きが隠せない駐屯兵達。
アルミンの力強い言葉を聞き、私は確信した。
彼なら、説得できる筈だとー
「人類の栄光を願い、これから死にゆく全てもの間に、彼の戦術価値を解きます!」
アルミンの言葉が続く。周囲の兵士の間にざわめきが走る。
希望と恐怖が同居する瞬間だ。
「デルマン隊長…彼らの言葉は考察に値…」
誰かが低く口を挟む。論理を求める声がまだ残っている。
「黙れ!」