第3章 反逆の刃を空にかざす

煙の中から走り出る彼は、恐怖に目を見開く敵の視線をものともせず、毅然と前へ進む。



「ヒッ…止まれ！」



銃口が向けられる。
アルミンは一瞬足を止め、両手を上げる。

その姿は、敵に対しての恐怖を押し殺し、しかし揺るぎない意思を示していた。



「ついに正体を現したな！化け物め！送るぞ！私は合図を送る！」



駐屯兵の声が怒りと恐怖で震える。


だが私の心は静かに見守る。

拳を知らぬ間に強く握り、アルミンの次の行動を凝視していた。



「彼は人類の敵ではありません！私達にはその知り得た情報を開示する意思があります！」



アルミンの声は、緊張で張り詰めた空気を切り裂くように響いた。



「命乞いに貸す耳は無い！目の前で正体を現せておいて今更何を言う！奴が敵でないのなら証拠を出せ！それが出来なければ危険を排除するまでだ」



呆れと苛立ちを感じながらも、私は動かずに彼を見つめる。

アルミンの呼吸は一瞬荒くなったが、表情には迷いがない。



「証拠は必要ありません！」



アルミンの声がさらに強くなる。
胸の奥から湧き上がる信念が言葉を震わせる。



「そもそも我々が彼をどう認識するのかは問題ではないのです！」



周囲の銃口や剣の刃に囲まれながらも、アルミンは揺るがない目で敵を見据える。



「何だと!?」



キッツの声が辺りに響くが、アルミンは目を逸らさず、強く言い放つ。



「大勢の者が彼を見たと聞きました！ならば彼が巨人と戦う姿も見たはずです！」



アルミンの言葉には、これまでの出来事すべてが凝縮されている。


周囲の巨人たちに立ち向かう姿、
共喰いされることなく戦う姿、
全てが証拠として脳裏に焼き付いている。



「我々がいくら知恵を絞ろうとも、この事実だけは動きません！」



アルミンの声は、静かに揺るがぬ確信を帯びていた。


私もミカサもエレンも、彼の強い意志に背中を押されるように胸が熱くなる。

心理の緊張と情景の圧迫感が混じる中、アルミンの声は鋭く、
そして確固たる未来への希望を示していた。


動揺と不安の中、“確かにそうだ”と周りは、警戒態勢を解いていく。

隊長は周りの変わりようを見て、地面を見つめた。



「迎撃体制を取れ！奴らの巧妙な罠に惑わされるな！」