第3章 反逆の刃を空にかざす
その横顔に、焦りと不安が交錯しているのが見える。
「本当、責任重大だ」
私は微かに苦笑する。
エレンの表情は真剣そのもの。
アルミンはまだ自分にその未来が見えていないのか、不安げにエレンを見つめる。
「お前ってやばい時の程どの行動が正解か当てる事が出来ただろう?それに頼りたいって思ったからだ」
「いつそんなことが…?」
「いろいろあっただろ。5年前なんかお前がハンネスさんを呼んでくれなかったら、俺もミカサも巨人に食われて死んでた」
その言葉に、私の胸の奥がじんわり熱くなる。
子供時代からの積み重ねた信頼が、今の状況での支えになっている。
彼ら三人の間には、揺るぎない絆が存在するのだ。
深く息を吸う。
恐怖と不安の渦中であっても、この信頼があれば、私たちは乗り越えられる。
この局面も、きっと。
エレンに信頼していることを言われたアルミンは、顔を俯かせ、少し考えていた。
背中には緊張と恐怖が走り、心臓が早鐘のように打っている。
拳を見下ろすと、爪の跡がつくほどに強く握り込み、
迷いと葛藤が渦巻いているのが手に伝わる。
「アルミン、時間が無い!」
エレンの焦る声が耳に刺さる。
遠くでは、砲弾の装填完了の合図が鋭く響く。
煙と埃が入り混じった空気が肌を刺し、緊迫感を増幅させる。
アルミンは意を決してゆっくり立ち上がった。
肩にかかる重圧を背負いながらも、瞳には迷いの色が消え、
決意の光が宿っている。
「必ず説得してみせる!3人は極力抵抗の意思がない事を示してくれ!」
アルミンの力強い言葉に、私は頷き、エレンも頷き、ミカサも静かに目で合図を返す。
空気が一瞬張り詰め、全員の呼吸が揃ったように感じられた。
「アルミン」
駐屯兵達の元へ歩き出すアルミンの背に、私は声をかける。
振り向いた彼の表情には緊張が走るが、
目は真っ直ぐ前を見据えていた。
時間はない、話す余裕はない。
それでも、私の信頼を伝えたいという気持ちが、言葉になって漏れる。
「私も君を信じている」
アルミンは驚きの色を浮かべ、ほんの一瞬目を見開く。
だがすぐに前を向き、足を前に進めた。
立体機動装置を外す音が甲高く響き、駐屯兵達の視線が一斉にアルミンに注がれる。