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【進撃の巨人】救世の翼【加筆修正完了】

第3章 反逆の刃を空にかざす


「エレン、鼻血が!」



私はすぐさま近づき、服の袖でその血を拭った。

エレンは驚いたように目を見開いたが、私が引かずに続けると、
静かに視線を落とし、されるがままになった。


近くで見ると、彼の顔色は恐ろしく悪い。

唇が青白く、呼吸も荒い。


熱に浮かされたように汗が額を伝い、頬を濡らしていた。



「顔色も酷いし、呼吸も荒い…明らかに体に異常をきたしている」



私の声は、思わず震えていた。

だが、エレンは首を横に振る。


その瞳は、狂おしいほど真っ直ぐに燃えている。



「今は体調不良なんてどうでもいいんです!俺に考えが二つある」


「それは、君が単独で動くということ?」



鼻血を拭いながら問うと、エレンの瞳がこちらを向いた。

その眼差しには、覚悟と焦りが同居していた。



「さっきもアルミンが言っていたが、既に君は身体に限界を感じているんだろう。
君自身が分かっていないだけかもしれないが」



私はそう告げながら、自分の胸に微かな痛みを覚えた。


——それは、過去の自分を見ているようだった。

何度も、何十度も身体に限界が来ていることに気づかず、ただ戦い続けてきた。

気づけば意識が途切れ、


帰る頃にはリヴァイに抱えられ、荷馬車に揺られていた。



(あの時の私は、きっと今のエレンと同じ顔をしていたんだろう)



だからこそ分かる。

この少年の不調が、決意と共に、破滅へと近づいていることも。



「止めた方が良い、ここからシガンシナ区までどれだけの距離があると思っている」



言葉は短く、だが重たく落ちるように響いた。

私は地面の砂利を蹴り返す足先を見つめる。
汗ばんだ掌の感触、胸の奥で鳴る鼓動


――すべてが「遠い」という現実を告げる。



恐らく、巨人化することは相当の体力を使うのだろう。

それはそうだ、自分よりも何十倍も大きい身体を操るのだから。



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