• テキストサイズ

【進撃の巨人】救世の翼【加筆修正完了】

第3章 反逆の刃を空にかざす


彼の瞳には、迷いも恐れもなかった。

ただ——生き抜こうとする意志だけが、確かに燃えていた。



「どこに…どうやって?」



一瞬、呆けたようにしていたアルミンが、ハッと我に返る。

蒼ざめた顔を上げ、エレンの方へ視線を向けた。



「とりあえずどこでもいい…そこから壁を越えて地下室を目指す。
もう一度巨人になってからな」



その言葉は、恐怖よりも確信に近い響きを持っていた。


エレンは自分の両手を見つめる。

その掌には、先ほど自らを噛んだ時の深い歯形が残り、赤黒い血が乾いてひび割れている。



(……自傷行為で、巨人化できるのか?)



信じ難い現実を前に、息を飲む。

だがエレンの瞳には、恐れよりも強い意志の光が宿っていた。



「そんなことが出来るの!?」



アルミンの声は、驚きと怯えが入り混じっている。

それでもエレンは迷わず言葉を続けた。



「自分でもどうやってやってるのか分からん。でも出来るって思うんだ!
どうやって自分の腕を動かしているのか説明出来ないようにな…」



その理屈にならない言葉に、私は息を呑んだ。


しかし、彼の声に宿る熱量は確かで、
それを聞くうちに、否定よりも“信じる”という感情が胸を満たしていく。

私も、アルミンも、ミカサも、ただ黙って彼の話を聞いていた。


誰一人、途中で遮ることができなかった。

それほどに、エレンの言葉は切実だった。



「さっきは無意識に砲弾を防ぐことだけ考えた。だからそれ以上の機能も持続力もなく朽ちたんだ」



荒い息の合間から絞り出すような声。

熱に浮かされたような顔つきで、エレンは続ける。



「今度はもっと強力な奴を!さっき巨人共を蹴散らした様な15m級になってやる!」



その瞬間、エレンの鼻から血がつっと流れ落ちた。

地面に滴る赤は、まるで燃え残った火のように鮮やかだった。


/ 102ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp