• テキストサイズ

【進撃の巨人】救世の翼【加筆修正完了】

第3章 反逆の刃を空にかざす


「二人とも、これを見て」



私が指を差すのは、内側にひっそりと咲いていた一輪の花。



「内側にだけ……花?」



アルミンが恐る恐る手を伸ばす。

その瞬間、低く鋭い声が飛んできた——



「おい!大丈夫か?!お前ら!副兵士長も!」



焦燥に満ちたエレンの声が響く。
まだ耳の奥が砲弾の衝撃でジンジンと痛む。

私はわずかに頷き、呼吸を整えようと深く息を吸った。


空気にはまだ焦げた鉄と血の匂いが残っている。



「エレン…これは?!」



アルミンが震える声で問いかける。



「分からん!ただこいつはもう蒸発する!

巨人の死体と同じだ!少し離れるぞ!」



その言葉と同時に、私たちは熱気を帯びた地面を蹴って距離を取った。

エレンが生み出した“何か”
——巨人の残骸は、ゆっくりと蒸気を上げながら崩れていく。

まるでこの世に存在してはいけないものが、ようやく還っていくように。


私たちは息を整え、瓦礫の影に身を寄せた。

胸の鼓動が早鐘のように鳴っている。


あまりに短い間に、あまりに多くのことが起こりすぎた。



「まだ様子を伺ってんのか、放心してんのか…今のところは駐屯兵団に動きは見られねぇな」



エレンの隣でミカサが周囲を見張る。

風が砂塵を巻き上げ、遠くで兵たちの怒号が響いていた。



「だが、最終的には攻撃を続行するだろう。
早くどうにかしなければ」



駐屯兵たちは今にも次の砲弾を装填しようとしている。

鉄の匂いと、緊張に張り詰めた空気。


彼らの中では、もはや“エレン”という存在は未知の脅威——恐怖そのものだ。



(……安全に抜け出す方法なんて、今のところ思いつかない)



そう思った矢先、エレンがぽつりと呟いた。

自分が巨人化する前に、ある記憶が蘇ったという。



——父が言っていた。“家の地下室に行け。そこに全ての答えがある”。



その瞬間、私たちの間に重い沈黙が落ちた。
/ 102ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp