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【進撃の巨人】救世の翼【加筆修正完了】

第3章 反逆の刃を空にかざす


私の声は、荒れた空気の中で唯一の冷却剤となる。


3人の視線が私に集まる。
拳を握る手に力を込め、私は自分に言い聞かせる


――この状況で私が最も冷静でなければ、誰も守れない。



「エレン、もう一回聞くがここに来るまでの記憶はあるか?
見ての通り君は今、命の危機にある。
何か小さな事でも良い、教えてくれないか?」



私は彼の近くに静かに歩み寄り、翡翠色の瞳をじっと見つめる。


心臓が高鳴る中、彼の小さな呼吸が伝わってくる。

恐怖と混乱に包まれたその瞳に、
少しずつ落ち着きが戻るのを感じた。


エレンは目を伏せ、かすかに震える唇で答える。



「ここに至るまでの記憶は…ありません。
体が怠くて立てないですし、自分が巨人だということも意味が分かりません」



その言葉に、私は胸の奥で一瞬安堵する。

まだ幼い彼の頭は、途方もない現実に追いついていないのだ。



「分かった、しかしエレン。

さっきアルミンから聞いたが、君は巨人に食べられる前、腕と足を失ったそうだな」



私の声は低く、確かに、しかし鋭く響く。


エレンはぱっと目を見開き、自分の手足を見つめる。
そこにあるのは、巨人に食べられたはずの、奇跡的に無傷の手足だ。


服の切れ目は不自然だが、
皮膚の柔らかさと指先の冷たさは確かに生きている証を示す。



「君は巨人じゃないと言っている。
だが、これが意味することは何だと思う?」



私は彼の瞳を見据えながら、静かな威圧感と確信を混ぜて告げる。


恐怖を抱きつつも、理解を待つ沈黙が室内を支配する。

巨人も同じだ。
項を切らない限り、どんな怪我も回復する。


今のエレンと、まったく同じ現象なのだ

――その事実を、私は沈黙の中で彼に伝え続けた。


エレンは、私の言葉に息を詰まらせた。


その瞳に宿った衝撃は、まるで胸の奥を貫くように痛い。

だけど、それでも現実を突きつけなければならない。


彼がこのまま“真実”から目を逸らせば、きっと誰も救えなくなる。



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