第3章 反逆の刃を空にかざす
私は胸の奥で痛みを感じながら、その言葉を吐く。
周囲の銃口が突きつけられる緊張の中、
エレンの無垢な瞳に映るのは混乱と恐怖だけだ。
見ているだけで、胸が締め付けられる。
「グレース副兵士長、そもそも貴様はなぜそっち側にいる?!
貴様の行動を取り上げ、調査兵団の壁外調査を暫く禁じてやろうか!!」
キッツの言葉に、思わず息が詰まる。
私一人だけが犠牲になるなら受け止められる。
しかし、調査兵団全体に影響が及ぶことを考えると、喉の奥で怒りと焦燥が入り混じった。
視界の端で、エレンが怯えながらも私たちにすがるように目を向ける。
「隊長!今なら簡単です!奴が人間に化けている間にぶっぱなしにしちまえば!」
駐屯兵の声が低く、急かすように響く。
私は拳をぎゅっと握りしめた。
冷たい金属の匂いと湿った空気が肺に押し込まれ、心拍が加速する。
その言葉に反応したミカサは、すっと前に出る。
全身から発せられる威圧感は、空気を切り裂くようだ。
「私達の特技は肉を削ぎ落とすことです…。
必要に迫られればいつでも披露します。
私の特技を体験したい方は…どうぞ、一番先に近付いてきて下さい」
彼女の言葉に、駐屯兵の顔がわずかに引きつる。
息が詰まるような静寂の中、近くにいた白髪の女が隊長に駆け寄り、何か囁く。
視界の端で、彼らの焦燥が震えるように伝わる。
「おい!ミカサ、アルミン!それに副兵士長!これは一体!?」
「ミカサ!人と戦ってどうする!狭い壁の中でどこに逃げようって言うんだ!」
「どこの誰であろうとエレンが殺されるのは阻止する!これ以外に必要ない!」
「話し合うんだよ!誰にも何も状況が分からないから、恐怖だけが伝染しているんだ」
「3人共、落ち着け!」