第2章 絶望の果てに灯るもの
次の瞬間、謎の巨人が動いた。
その動きは人間のように滑らかで、意志を持つようだった。
(何をするつもり…?)
共喰いのせいで両腕は引き千切られ、再生も追いついていないはずなのに──
謎の巨人は、奇行種の項に噛み付いた。
その行動に、全員の瞳が見開かれる。
(なぜ…巨人の弱点を知っている?)
項に噛み付いたまま、奇行種の体を高く掲げる。
その巨体が軋み、筋肉が悲鳴を上げる。
次の瞬間、その死体を振りかぶり、迫ってくる別の巨人へと叩きつけた。
血煙と蒸気が舞い上がり、屋根瓦が粉々に砕け散る。
「おい…何を助けるって?」
ジャンが呟いた声は、もはや皮肉でも怒りでもなかった。
ただ、目の前の光景を理解しきれない人間の声。
巨人は雄叫びを上げた。
その咆哮は、痛みとも、誇りとも、祈りとも取れた。
そして、糸が切れたように崩れ落ちる。
地面が震え、埃が立つ。
「さすがに力尽きたみたいだな。もういいだろ、ズラかるぞ!」
ジャンがそう言って振り向く。
だが、その足が止まった。
ミカサとアルミンの顔を見た瞬間、彼の喉が詰まる。
二人の表情は驚愕でも恐怖でもない。
それは、失われたと思っていた“希望”を見つけた者の顔だった。
──まるで、そこにいた巨人が「仲間」だったかのように。