第2章 絶望の果てに灯るもの
ライナーも、私と同じようなことを思っていたのか。
謎の巨人の周辺にいる巨人を自分たちで倒し、とりあえず延命させようと言っている。
彼の目は真剣で、理屈よりも“感覚的な確信”に近いものを感じさせた。
だが、その提案に誰もが頷くわけではなかった。
「正気かライナー?! やっと、この窮地から脱出できるんだぞ!」
ジャンの声が響く。
その声は怒りよりも、恐怖と焦燥が入り混じっていた。
もう誰も死にたくはない。
誰も、これ以上血を見たくはない。
ジャンの言うことも分かる。
ここにいる者たちは、身体的にも精神的にも限界に近い。
脚は震え、刃はすり減り、心はすでに擦り切れている。
そんな中でまた戦闘になったら──せっかく助かった命をドブに捨てるようなものだ。
「例えばあの巨人が味方になる可能性があるとしたら…どう?」
アニが静かに言った。
その声音は感情を殺していたが、言葉の奥には希望の火がかすかに灯っていた。
「どんな大砲よりも強力な武器になると思わない?」
その一言に、ジャンは口を開けたまま固まった。
「味方…だと…? 本気で言ってんのか?」
そのやり取りを遮るように、アルミンの声が上ずる。
「あ! アイツは…! トーマスを食った…奇行種!?」
言葉に釘を打たれたように、皆の視線が一斉に謎の巨人へ向く。
その瞬間、空気が凍った。
誰もが呼吸を忘れ、ただ見つめる。