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【進撃の巨人】救世の翼【加筆修正完了】

第2章 絶望の果てに灯るもの


補給室に他の人が残っていないことを確認し、私自身も撤退をするため外へと出る。



外気が顔を撫で、埃混じりの風が髪をはためかせる。
空は重く、まだ戦火の余韻を残している。





しかし外へ出た時、屋根の上で固まっているミカサを発見し、私はその場へと向かった。

彼女の姿は小さく、しかしそこにいること自体が強さの証にも見えた。




「どうした、ミカサ」




問いかける声に、彼女はふと我に返ったようにこちらを見る。
視線の先にあるのは、先程まで暴れていた謎の巨人だ。



その姿に、近くにいたアルミンも思わず息を詰めて十字を切るように“うっ!”と声を漏らした。





「共食い…? 体を再生出来ないのか?」




アルミンの声は分析的で、僅かな恐怖と同時に興味が混じっている。
目が鋭くなっていた。





「どうにかあの巨人の謎を解明出来れば…この絶望的な現状も打破する切っ掛けが出来ると思ったのに…」





ミカサの言葉には切望がこもる。
若者の理性が、混沌に光を当てようとする瞬間だ。





「同感だ」





その声はライナーのもので、近くにはベルトルト、アニ、ジャンが並んでいる。


彼らの表情は兵士としての好奇心と慎重さが混ざっている。





確かに、調査兵団の一員としてもあの巨人の存在は気になる。

これまでの壁外調査で見たことのない存在だ。



どうにか、あの巨人を生きたまま生け取りにすることは
――という考えが、皆の間に静かに芽生えている。




生け捕りにできれば得られる情報は計り知れない。

だが同時に、それがどれほど危険な賭けかも誰もが理解していた。





“可能性と危険、その天秤をどう差配するか”と私は考える。




生け捕りへの期待が、兵たちの胸に小さな火を灯す。


だがその火は、じきに冷たい現実で吹き消されるかもしれない

――という覚悟も、皆の顔に刻まれていた。




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