第2章 絶望の果てに灯るもの
その声で、一斉に銃を放つ男が聞こえてくる。
銃声が連続して破裂し、薬莢の弾ける音が空気を切る。
そして、控えていた者たちが走る。
足音が響き、動きが波紋のように広がる。
私は誰か失敗していないかを注意深く見ていた。
目は細かく動き、誰かの動きが乱れるたびに胸が跳ねる。
そして、ミカサ、ライナー、ベルトルト、アニ、ジャンの5人は無事に仕留めることが出来ていた。
刃の閃きと共に、巨人が崩れ、蒸気が立ち上る。
確かな手際に一瞬、安堵が過る。
(サシャとコニーだ!)
二人は怯えた目をし、巨人から逃げる。
震える足取りに胸が締め付けられる。
私はすぐさま待機していた柱から降りて、巨人の頸目掛けて剣を振り下ろす。
金属が空を裂く音、そして肉を切る感触が手に伝わる。
切られた巨人はそのまま倒れ、蒸気を上げながら消えていく。
崩れる巨体の陰に粉塵が舞い、熱と臭いが一瞬強くなる。
「副長ー!!!ありがとうございますぅぅ!!」
涙をボロボロと零しながら私の腰に抱きついてくる。
濡れた頬が胸に押し付けられ、その重みと体温が生々しい安堵を伝える。
“私より背が高いんだから、そんな所に抱きつかないで欲しい…。”
と、心の中で苦笑しつつも、その抱擁をそっと受け止める。
「怪我はない?」
「お陰様で!」
怪我が無いのを確認した私は、自身の腰に巻かれた手を解き、立つように言う。
サシャは震えながらも従い、感謝の言葉を何度も繰り返す。
土下座しそうな勢いのその仕草に、場の緊張が少し和らぐ。