第2章 絶望の果てに灯るもの
カラカラとリフトが下っていく音が聞こえてくる。
金属と油の擦れる音が低く反響し、粉塵の匂いが鼻を突く。
音の発生源を見れば、沢山の人が銃を構えて降りてきている。
銃身が陽を受けて冷たく光り、降りてくる兵士たちの顔は緊張で引き締まっている。
それに気づいた巨人達が、リフトの傍に寄ってくる。
巨人の影がゆらりと伸び、建物の輪郭を歪ませる。
彼らの視線が一斉にこちらへ集まると、空気が重くなる。
目視した限り、巨人の数は増えていない。
それでも、迫る密度が恐怖を倍化させる。
誰かの悲鳴の声がする。
あんなにも巨人に近づかれたのは初めてだろうか。
声は細く、しかし切実で、石畳に反響して遠くまで届く。
あまりの恐怖に、新兵達の肩が震えている。
小さな体の震えが、装備の金属音に混ざって聞こえる。
しかしそれでも、己の任務を果たそうとしている。
震える手が銃をしっかり握り直すのが見える。
意志が恐怖を押し返している。
皆、思っていることは一緒だ。
(――一人も死なせたくない、この一撃で決める)
その沈んだ決意が、静かな合図のように胸の中で鳴る。
周りが静かなせいか、荒い息遣いが聞こえてくる。
いや、もしかしたらそれは私のものかもしれない。
胸の奥で鼓動が早くなり、息が浅くなるのが分かる。
リフトと巨人との距離はもう僅かしかない。
鉄のケーブルが軋み、時間が凝縮されるように一瞬が長くなる。
まだ、まだだ…。
「撃て!!」
その号令は短く、絶対だ。
声で全員が一斉に動く。緊張が一斉に解け、行為へと変わる瞬間だ。