第2章 絶望の果てに灯るもの
移動の途中、新兵たちの緊張をほぐすためか、妙に砕けた会話が生まれる。
緊迫した空気の中に不意に混ざる軽口は、むしろいい潤滑油だ。
足取りは重くても、息は少しだけ軽くなる。
「こいつを奴らのケツにぶち込む! 弱点はこの二つのみ」
「知らなかった! そんな手があったのか!?」
「私も今…初めて知りました…」
「ライナー! それがお前の最期の言葉になるかもしれんぞ?」
サシャとコニーのやり取りに、場がふっと和む。
彼らの馬鹿話は緊張を鎮め、訓練兵たちの肩の力を抜かせる。
私はその会話を聞きながら、心の中で小さな笑いを呑み込む。
若者たちの声は、ここでしか出ない純粋さを帯びている。
空気はまだ鋭く冷たいが、隊列は静かに、確実に目的地へと向かっている。
訓練兵たちの呼吸は揃い始め、武器の金属音が小さく連鎖する。
(さあ、やるだけだ)
私の手がブレードに触れ、ガスの残量を再確認する。
疲労があっても、判断は研ぎ澄ませている。
若者たちの未来が、この瞬間の判断にかかっているのだ。
外ではまだ巨人同士の争いが続いている。
その騒音が、次の瞬間の幕開けを告げるように聞こえた。