第2章 絶望の果てに灯るもの
私の決断に、アルミンの顔が一瞬で輝く。
安堵と誇りが混ざったその表情を見て、胸が熱くなる。
だが同時に、計画が「一回勝負」であることの重さがのしかかる。成功すれば多くを救えるが、失敗の代償は大きい。
***
「…うん、覚えた」
私は短く頷きながら、七人に割り振られた役目と名前をもう一度頭の中で反芻した。
ミカサ、ライナー、ベルトルト、アニ、ジャン、コニー、サシャ――
どの名も、訓練兵団の上位に並ぶ顔ぶれだ。
若いが、刃を振るう手は確かだと私は思っている。
「それにしても、なぜ副兵士長がここに…
」
ライナーの声が緩やかに投げられる。
体つきの良い彼の表情は、好奇と多少の困惑を混ぜていた。
周りの六人も同じ疑問を浮かべているのが見て取れる。
「怪我をしていたから。でも、結果的には良かったかもしれない。巨人殺しのスペシャリストが一人もいないのは痛手だから」
私は淡々と答える。
言葉は簡潔に、だが胸の中では早く終わらせて休みたいという焦りがちらついている。
「怪我は大丈夫なんですか?!」
「もう治っているから大丈夫」
ベルトルトが私の顔色に触れて言う。
「でも、顔色悪いですよ…?」
その一言で、ふっと襲ってきた疲労の波を私は否定できずに居た。
足元が一瞬揺れそうになる。
けれど、ここで弱みを見せるわけにはいかない。
訓練兵たちの前で不安を撒き散らすことは出来ないのだ。
(情けない姿は見せられない。ここを片付ければ、休める)
そう自分に言い聞かせ、歯を食いしばる。
心の中で回るのはただ一つ――早く終わらせて皆を安全に戻すこと。
「気にしないで。さぁ、そろそろ準備もできただろう。行こう」