第2章 絶望の果てに灯るもの
ミカサの顔は血の筋が走り小さな切り傷があるが、大きな致命傷はない。
助けに行った二人も無事らしく、胸の奥で、重かったものがふっと抜けた。
訓練兵たちの顔に瞬時に安堵が広がる。
囲んでいた若者たちは歓声に近い声を上げ、三人を取り囲んだ。
地獄のようだった空気が、一時的に救われた匂いへと変わる。
(よかった……無事で)
だが、安堵は長くは続かなかった。
帰還した三人のうち、坊主頭の少年――あの先導していた子が、息を荒げながら興奮した調子で口を開く。
「アイツを上手いこと利用出来れば俺達はここから脱出出来る!」
言葉が場に投げ込まれると、周囲にざわめきが走る。
訓練兵の一人が眉をひそめ、驚きと困惑の声が連鎖した。
「巨人を利用する!?」
「巨人に助けてもらうだと? そんな夢みたいな話……」
ミカサは冷静に言葉を続ける。
「夢じゃない」
グレースはその言葉を受け止める。
目の前で起きた光景が、その可能性を否定しきれない衝撃を与えている。
さっき見たのは、確かに「巨人が巨人を倒す」光景だった
——常識を越えた異変だ。
「奇行種でも何でも構わない。ここであの巨人により長く暴れてもらう」
補給室近辺に巨人が群れ、あの“巨人同士の衝突”が起きたことで周囲の状況は一変した。
もし、この現象を利用できるのなら
——と考える者がいても不思議はない。