第2章 絶望の果てに灯るもの
私はその光景を見つめ、胸の奥がちくりと痛んだ。
(私よりずっと幼くて、まだ新兵の子が、あんなにも自信に満ちて演説してみせた……)
その自信が痛い。
情けないと思う自分にも気づく。
私なら、もっと効率よく、ガスを節約して戦う方法を持っている。
たった一人で足止めをする術だって、私は既に習っている。
「…新兵達」
私の声は低く、しかし確実に広場に届いた。
その一呼吸で、場の空気が再び私に向く。
「あの少女に先を越されてしまったが、それでも言おう。
私は彼女と同じように、あそこにいる巨人共を倒すことが出来る。
君達に被害が及ばないよう、出来るだけ力を尽くそう」
――短い言葉だが、そこには揺るがぬ意志が込められていた。
訓練兵たちの表情が変わる。
恐怖の影が少し退き、代わりに決意の色が差す。
「だから、どうか私達に着いてきてくれ」
私は余計な説得はしない。
行動で示す方が早いのだ。
自分の身体の痛みも、疲労も、今は脇へ置く。
護るべき者たちのために、今できることをするだけだ。
私が一歩踏み出すと、後ろから大きな雄叫びが上がった。
訓練兵たちの喉から絞り出される声、その震え混じりの威勢が、冷たい空気の中で次第に力強さを帯びていく。
――そしてアンカーを射出する乾いた音。
ガスの噴き出し音が続き、若者たちの装具が唸りを上げる。
(今年の新兵は、気合いのある者が多いな)と、私の胸に静かな驚きが湧いた。
風が巻いて、血の匂いが鼻を刺す。
だが、この瞬間、絶望ではなく「行動」が勝っている。
私たちは、動く。