第2章 絶望の果てに灯るもの
「マルコ!本部に群がる巨人を排除すれば補給が出来て皆が助かり、壁を登れる。
違わない?」
少女の言葉は真っ直ぐで、周囲の空気を切り裂いた。
マルコと呼ばれた少年は、震える声で「あ、あぁ…」とだけ答える。
彼の瞳には恐怖と、でもどこか救いを求める希望が混ざっていた。
「いくらお前がいてもあの数の巨人を倒す事なんて…」
訓練兵の一人が呟く。
声は弱々しく、すぐに風に消えそうだ。
「出来る!」
その一言を張り上げたのは、少女――ミカサだった。
声に迷いはなく、胸の奥から湧き出す確信だけが言葉を支えていた。
マルコは驚愕に目を見開き、周りの空気が一瞬揺れるのを私も感じた。
彼女は続ける。
言葉はやけに早く、怒りにも似た熱を帯びていた。
「私は強い。あなた達より強い!すごく強い!
だから、あそこに群がる巨人共を蹴散らすことが出来る! 例えば一人でも!
あなた達は腕が立たないばかりか臆病で腰抜けだ! とても残念だ!
ここで指を咥えて見てればいい!
咥えて見てろ!」
言葉は過激だ。訓練兵たちの中には眉を寄せる者もいるが、同時に目の奥に火が灯る者もいた。
「出来なければ死ぬだけ。でも勝てば生きる!戦わなければ勝てない!」
少女はそう叫ぶと、迷いなく飛び出していった。
その姿は無鉄砲とも思えるが――確かに、誰よりもまっすぐで、誰よりも救いを求める光を放っていた。