第2章 絶望の果てに灯るもの
私が遠目で見た兵士達の正体は、訓練兵だった。
訓練兵達の間には、絶望の色が濃く漂っていた。
空気は重く、目に見えるものすべてが歪んでいるように感じる。
瓦礫や血痕、遠くで見える巨人の影
――そのどれもが、希望を押し潰す圧力となっていた。
そんな中、私に気づいた一人の兵士が顔を輝かせて歩み寄る。
その瞬間、空気がわずかに軽くなったように感じた。
希望の光が差し込むように――。
「さっき話で聞いていたけど、本当に副兵士長がいたとは!!」
その声に引きずられるように、他の兵士たちも私の方へ目を向ける。
絶望の表情が、希望の光に少しずつ変わっていくのが分かった。
圧がすごい。
小さな背中に背負う責任が、彼らの眼差しに宿る。
この若者たちを、ここで見殺しにするわけにはいかない
――そんな思いが心を貫く。
「副兵士長、助けて下さい!私たち、ガスもまともになくて補給しに行こうと思ったのですが…」
「補給班が繊維喪失して、補給することが出来ないんです!」
「あそこに群がる巨人共のせいでガス補給室まで行くことができないんだ!」
茶髪の女、馬面の男、坊主頭の男
――そして他にも、目の前に押し寄せる訓練兵たちの必死の声。
彼らの恐怖と絶望、必死さが混じった声が、まるで重低音のように胸に響く。
「分かったから、もう少し離れて」
私が声を張り、距離を取るよう促すと、さっきまで近くにいた新兵たちは、少し怯えながらもサッと下がった。
その背中を見ながら、私は心の奥で冷たい計算を始める。
(…あの巨人の数、遠目で見た時より多くなっていないか…
ガスボンベも残量が少ない。例え私があそこまで行けたとしても、全部の巨人を倒せるか…?)
手にしたボンベをコンコンと叩き、残量を確かめる。
金属が打ち鳴らされる音は小さいが、私の心には重く響く。
緊張と恐怖が、冷たい汗となって背中を伝う。
そのとき、意志の強い少女の声が聞こえた。