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【進撃の巨人】救世の翼【加筆修正完了】

第2章 絶望の果てに灯るもの


撤退の鐘が鳴る。



金属を打ち鳴らすような重い音が、焼けた空気を震わせる。





同時に、どこかで誰かの息遣いが聞こえる。荒い、切迫した呼吸。





(やっと…ッ、撤退……?)






それは、一般市民の避難完了を意味する鐘。

私は近くの屋根に着地し、膝をついて息を整えた。




立体機動のガスの匂いが鼻を刺す。
腕が痺れ、肩が焼けるように痛い。





(しんどい……早く撤退しよう)





何体倒したか、もう数えていない。

気づけば息を吸うたびに血の味が口に広がる。


体中の傷が悲鳴を上げていた。




それでも、まだ動ける。

まだ、私の足は止まっていない。






ワイヤーを射出させ、再び空へ戻る。

壁の上へ――そう思った瞬間、視界の端に異変が映った。





(あれは……兵士たち?)






遠くの通りに、小さな影が数人。



撤退の鐘が鳴ったはずなのに、動く気配がない。




なぜ? どうしてまだ残っている?





(まさか……ガス切れ?)





視線を滑らせると、補給室の方向に巨人が群がっているのが見えた。




そこが原因だ。
あの巨人の集団が、彼らの退路を塞いでいる。





(なるほど……事情は分かった)






放っておくなんて、できるはずがない。


喉の奥から熱がこみ上げ、体の痛みを押し込めて、私は再び空へと飛び出した。




風を裂く音が耳を刺す。

死の匂いが濃くなる空を切り裂き、グレースは再び戦場へと戻っていった。
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