第2章 絶望の果てに灯るもの
突然、雷のような轟音が耳を裂き、地面が震えた。
全身に伝わる激しい地響きに、私は思わず膝を折る。
見上げた先――壁の外側からこちらを覗き込む、不気味な影。
目の前に実体を現したのは、これまで書類や報告でしか聞いたことのなかった、あの巨人。
筋肉組織を剥き出しにし、蒸気のような煙を噴き上げるその巨体は、想像を遥かに超える大きさ。
何より、高さ――天を突くようなその背丈に、息を飲む。
――間違いない。あれは――
「超大型巨人だー!!」
誰かの叫びが風に混じり、耳に刺さるように響いた瞬間、巨人は壁の門を蹴った。
砕け飛ぶ石片が周囲に矢のように散り、あたりの空気を震わせる。
当たれば、確実に命を奪うだろう。
「伏せろー!!!」
叫んだ声も、飛び散る破片の音にかき消される。
普通の巨人は、脳が単純で人間を食べることしか考えない。
だが、あの巨人――足で壁を蹴破った動きから察するに、知性を持っている。
5年前と同じ、あの恐怖の再来だ。
私の頭の中で判断を急ぐ。
南区――トロスト区の扉を破壊したということは、巨人たちは間もなく、この区画に流れ込む。
人々の避難が間に合うかどうか、胸の奥が締め付けられるようだ。
「調査兵団が不在の日に来るなんて、最悪だ…!」