第2章 絶望の果てに灯るもの
暫くすると、門が開く重い音と、馬の蹄が石畳を打つ音が遠くに響いた。
それも束の間で、やがて静寂が戻り、集まっていた市民たちは散らばり、それぞれの生活へと戻っていく。
人が少なくなった隙を見計らい、グレースは小道からそっと出る。
もちろん、黒いフードを深く被ることを忘れずに。
「いってらっしゃい、みんな」
声は小さく、囁くように――
けれど、心の奥では、彼らの無事を祈る気持ちが渦巻いていた。
歩く度に、地面の石の感触や、冷たい風の匂いが鼻腔をくすぐる。
街は、かすかに朝の名残の光に照らされ、穏やかに息をしているようだった。