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【進撃の巨人】救世の翼【加筆修正完了】

第2章 絶望の果てに灯るもの


机の上に置かれた紙の上で、リヴァイの影が長く伸びていた。




『……なぜ?』




抑えた声が、自然とこぼれた。

自分でも驚くほど静かな声だった。


胸の奥では、怒りと困惑が渦を巻いていたのに。




リヴァイは眉をひそめ、短く息を吐いた。

机の上に置かれた彼の手が、かすかに震えているのが見えた。



怒っているのではない。
迷っているのだと、すぐに分かった。





『てめぇがいつまでたっても学習しないからだろうが。
 怪我が次の壁外調査までに治っていようが、行くのは認めねえ』






その声音には冷たさと、そして――微かに滲む優しさが混じっていた。





『ちょっと、話は終わってないッ!』






思わず声を荒げていた。

“これで少しは反省しろ”とだけ言い残し、立ち去ろうとする背中を、グレースは反射的に掴んでいた。




その腕は温かく、けれど、簡単に振りほどかれるだろうと思っていた。



だが、リヴァイは振り解かなかった。


無言のまま、少しだけ振り返る。
その瞳に宿る影が、グレースの心をざわつかせた。





(……優しいな)





胸の内で呟いたその言葉は、決して口から出ることはなかった。





『いくら上司命令だろうと、横暴すぎるだろう。
私は納得していない』





怒りではなく、ただ“置いていかれる”ことへの拒絶。

その感情が、自分でもどうしようもないほど滲んでいた。




リヴァイは無言で一枚の紙を再び取り出す。

白紙のように見えるそれは、彼女にとって重く冷たい鎖のようだった。



『さっき見せた書類が見えなかったか』





――エルヴィン直々の命令だ。




本来副長であるグレースは、エルヴィンとリヴァイが下した命令に従わないといけない。




『見えている。で?私が今回その命令に従う必要性はないと思うが』




自己犠牲が酷すぎるから反省させるために次の壁外調査には同行させません。
大人しくしていなさい。




そんなアホみたいな命令、なぜ従わないといけない。




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