第3章 反逆の刃を空にかざす
「そこを退け!」
リコはそのまま巨人の片目を切り、飛んで行く。
刃が肉を抉る音が湿った裂け目を響かせ、巨人の体液が噴き出し、地面に黒い染みを広げる。
リコの体が宙を舞う軌跡に、風が渦を巻き、彼女の息遣いが遠くからでも聞こえるほど荒い。
心の中で、リコの勇気に感謝が込み上げる
――彼女の行動が、私たちの命を繋いでいるのだ。
そして目を切られ体制を崩した巨人を、ミカサが仕留めた。
ミカサの刀が閃き、巨人のうなじを正確に断つ瞬間、蒸気が爆発的に噴き上がり、周囲を白い霧で覆う。
巨人の体がゆっくりと倒れ、地面を叩く衝撃が足元を揺らし、ミカサのマントに飛び散った血が、彼女の静かな決意を象徴するように滴り落ちる。
私の胸に、ミカサの強さに羨望と安堵が混じり合う。
その間も、エレンは一歩一歩壁の穴へと近づいていく。
エレンの足取りは重く、岩の重みに体が傾きながらも、その背中には揺るぎない意志が宿り、汗が背筋を伝う姿が、遠くから見ても痛いほど伝わってくる。
穴の縁から吹き上げる風が彼の髪を乱し、巨人の残響がまだ空気に残る中、彼の存在が私たち全員の希望を体現している。
「行っけえぇぇぇエレン!!」
アルミンがエレンに声援を送り、それに応えるかのようにエレンは雄叫びを上げながら、担いでいた大きな岩を空いていた穴を塞ぐように置いた。
エレンの叫びが喉から迸り、岩の重みが地面に沈む音が轟き渡り、衝撃波が空気を震わせて周囲の埃を舞い上げる。
私の心は高鳴り、アルミンの声に込められた友情の熱が、私の胸を熱くする
――エレン、君ならできる、と祈るように思う。
凄まじい音が鳴り、風が巻き起こる。
音の余波が耳を劈き、突風が体を押し戻し、視界が一瞬白く染まる。
穴が塞がれる瞬間、壁の向こうから巨人の咆哮が遮断され、静寂が訪れるが、それは嵐の前の静けさのように、皆の心に緊張を残す。
皆は、それをただ見つめていた。
勝利の光景が、血と汗にまみれた視界に焼き付き、息を潜めて立ち尽くす中、誰もが胸に込み上げる感情を抑えきれない。
喜びか、悲しみか、それとも喪失の予感か
――私の心は、複雑に渦巻く。