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【進撃の巨人】救世の翼【加筆修正完了】

第3章 反逆の刃を空にかざす


しばらく皆動くことは出来なかった。


体が鉛のように重く、足が地面に根を張ったように動かず、ただ岩の置かれた穴を見つめる瞳に、涙がにじむ。


風が冷たく頰を撫で、遠くの巨人のうめきが微かに聞こえる中、時間そのものが止まったかのようだ。

リコは力が抜けたように座り込む。


膝が折れ、地面に手をつき、肩が小さく震える姿に、彼女の内に溜め込んだ疲労と安堵が溢れ出る。


リコの息が荒く、視線が穴に注がれ、唇がわずかに動く


――これで、終わったのか、と自問するような表情。



「みんな…死んだかいが、あったな…!」



涙が込み上げてきて、そのまま黄色の煙弾を空へ撃ち放った。


煙が弧を描いて昇り、青空に黄色の軌跡を残し、風に運ばれて広がるその色が、勝利の象徴として兵士たちの心に染み込む。

リコの頰を伝う涙が、煙の光にきらめき、彼女の声が嗚咽に変わる瞬間、私の胸も締め付けられる


――仲間たちの犠牲が、この煙に報われている。


それは、作戦成功の合図だった。


煙がゆっくりと拡散し、周囲の空気を染め上げる中、遠くの兵士たちがそれを見て動き出す。

希望の色が、絶望の灰色を押し退けるように。



「人類が今日初めて、巨人に勝ったよ…!」



その勝利の色を生き残った兵士はぼんやりと見て、そして思ったのだった。


煙のヴェール越しに、穴の塞がれた壁が堂々と聳え、夕陽がその輪郭を金色に縁取る中、心の奥底で静かに響く言葉


――この勝利は、ただの奇跡じゃない。


“仲間の死は、無駄にならなかった”のだと。


死者の顔が脳裏に浮かび、胸が痛むが、同時に誇りが湧き上がる。

風が煙を運び去り、静けさが訪れるその瞬間、皆の瞳に、未来への微かな光が宿る。
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