• テキストサイズ

【進撃の巨人】救世の翼【加筆修正完了】

第2章 絶望の果てに灯るもの


「いい加減、その自己犠牲をどうにかしろ」


「君までそんなことを言うの?」



グレースは、苦笑にも似た微笑を浮かべる。





「その言葉、医療班の人にも言われたばかりだよ。
それに――君だって知っているだろうる
“副兵士長の怪我の治りの速度は、普通の人間とは思えない”っていう噂を」






リヴァイの眉が、ほんのわずかに動いた。

確かに、その噂は兵団内ではよく知られている。



彼女は何度も、誰かを庇って重傷を負いながら、翌日には何事もなかったように戻ってくる。



それが何度繰り返されたか、もう数え切れないほどだ。




「……もう、この怪我も治った。兵団には迷惑をかけてないじゃないか」




そう言って笑うグレースの声は穏やかだった。

だが、その裏には少しの疲れと、わずかな諦めが滲んでいた。





リヴァイは机に視線を落とし、何も言わずに懐から一枚の書類を取り出した。



無造作に、それをグレースの前へ滑らせる。





「その次の壁外調査についてだが――」





彼の言葉が終わるより早く、紙の端が彼女の指に触れた。


広げられた書類には、細かい作戦の概要と部隊の人員配置が記されている。


けれど、そこに記された“ある一文”が、グレースの目を止めた。





視線が動かない。

思考が、紙の上で凍りつく。





彼女はゆっくりと顔を上げ、リヴァイの瞳を見た。

いつも通りの、感情の読めない灰色の瞳。


だけど、その奥にかすかに何かを隠しているようにも見えた。





「……これは、どういう意味?」




絞り出すような声で問う。

リヴァイは答えず、彼女の机の上に放置されていたティーカップを手に取った。



底に沈んだ紅茶の色を一瞥し、冷めきった液体をそのまま持ち上げる。





「そういうことだ」





その一言だけを残して、彼は淡々とした仕草で椅子を離れた。




/ 102ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp