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三番隊の剣士【薄桜鬼】

第8章 御陵衛士


血の匂いが、夜気に濃く漂う。

道の中央に転がる伊東の骸は、無惨に赤く染まり、月光に照らされて不気味に光っていた。

霧島は刀を拭うことも忘れ、荒い呼吸を繰り返していた。

心臓は暴れ馬のように胸を叩き、手の震えが止まらない。
刃の感触、骨を断つ重さが、まだ腕に残っている。

そのとき、遠くから足音が響いた。
カツ、カツ、と規則正しく石畳を踏む音が、夜を裂くように近づいてくる。

「来やがったな……」
永倉が低く唸り、血に濡れた刀を構え直した。

原田は槍をぐっと握り直し、霧島の肩を叩いた。

「しっかりしろ、霧島!ここで怯んだら、俺たちが死ぬぞ!」

霧島は大きく息を吸い、膝の震えを押さえ込むように地面を踏みしめた。

やがて、闇の中から御陵衛士の影が現れる。
三人、いや四人。

先頭には藤堂の姿があった。

月明かりが刀身に反射し、青白く光る。

「……伊東さん!!」

御陵衛士の一人の叫びが夜に響き渡った。

駆け寄ると、骸の傍に膝をつき、血に濡れた手で伊東の肩を揺さぶる。
その顔には怒りと悲嘆が入り混じり、目尻は赤く染まっていた。

「……誰が、こんな……!」

御陵衛士たちが顔を上げ、鋭い視線で辺りを睨め回す。

「出てこい!!卑怯者!!!」

永倉が目配せをする。
三人は一斉に物陰から飛び出した。

「貴様ら……新選組……!」

御陵衛士たちの顔が怒りに歪む。
藤堂だけは、驚きと悲しみを隠さず、霧島を凝視した。

「許さぬ……!かかれ!!!」

叫びと同時に、刀が月光を反射して閃く。
御陵衛士たちが襲いかかってきた。

「来るぞ!」

永倉が前に出て、斬り込む敵の刀を受け止める。
火花が散り、夜を一瞬だけ照らした。

原田の槍が大きな弧を描き、敵の腹を貫く。
呻き声が闇に溶けた。

霧島も刀を構え、迫る一撃を必死に受け止める。
衝撃で腕が痺れ、刃と刃が擦れ合い、耳障りな音が響く。
だが、もう足は退かなかった。

「うおおおおっ!!!」

霧島は渾身の力で相手を押し返し、斬り払った。

頬に血しぶきがかかるが、もう目をつぶらない。
刃が相手の肩を割る感触が、手の中に確かに残った。
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