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三番隊の剣士【薄桜鬼】

第7章 新風


斎藤が御陵衛士に潜入してから、音沙汰はない。
連絡がないことが任務の証だと分かっていても、霧島の胸はざわついたままだった。

机の上に積まれた報告書に目を通しながら、深く息を吐く。
三番隊を率いる責任は、想像していた以上に重かった。

斎藤がいた頃は、ただ指示に従えばよかった。
今は、決断するのも、責任を取るのも、自分だ。

「霧島隊長、次の巡察先の確認を」

隊士が声をかけてきた。
霧島は思わず背筋を伸ばす。

「……はい、すぐに行きます」

筆を置いて立ち上がると、廊下に差し込む朝の光がやけに眩しく感じられた。

巡察の帰り道、隊士たちの何気ない笑い声を聞きながら、霧島はひそかに安堵する。

彼らの士気が下がらないように、弱音を吐くわけにはいかない。
自分が崩れれば、隊が崩れる──その思いだけで、なんとか立っていられた。

「巡察後に稽古です。稽古場に集まってください」

霧島は声を張り上げ、隊士たちを見渡す。
彼らが威勢よく返事をするのを見て、微笑んだ。

稽古場では木刀の打ち合う音が響き渡る。
霧島は一人ひとりの動きを見ながら、時折声を飛ばす。

「そこ、間合いが近い!」
「肘が落ちてますよ、構え直して!」

気を抜けば、心は斎藤のことばかりを考えてしまう。
だからこそ、目の前の稽古に集中することで、ようやく平静を保っていた。

稽古が終わり、汗を拭っていると背後から声がした。

「霧島隊長、張り切ってるね」

振り向くと沖田が立っていた。
いつもの飄々とした笑みを浮かべているが、その瞳はどこか霧島の様子を探るようだ。

「……皆に負けていられませんから」

霧島は微笑んだつもりだったが、声がかすかに震えていた。

「はじめ君のこと、考えてるんでしょ」

軽い調子の声なのに、妙に心の奥を突かれた気がした。

霧島は思わず息を呑み、言葉を探す。

「……心配しても仕方ないと、分かってるんですけど」

沖田はにやりと笑う。

「じゃあ、心配するだけにしときなよ。顔に出さないとこが、隊長の仕事だし」

「顔に出てますか…?」

沖田は軽く肩をすくめた。

「時々ね」

霧島はわずかに目を見開き、そして小さく頷いた。
「……気をつけます」

沖田は悪戯っぽく笑った。

「気をつけるのもいいけど、たまには誰かに頼るのも隊長の仕事だよ」

その言葉がじわりと胸に残った。
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