第7章 新風
「大丈夫?」
沖田は低く問いかけ、霧島の顔を覗き込む。
真っ青な顔をした霧島を、沖田はそっと縁に座らせる。
手足は小刻みに震え、呼吸も乱れていた。
肩や背中から伝わる微かな震えを感じ、沖田は自然と背中を撫でた。
ふと視線が、サラシを巻いた胸元に落ちた瞬間、沖田の瞳が大きく見開かれる。
「……あれ、君もしかして──」
霧島は慌てて襟元を押さえ、頬が熱を帯びる。
小さく息をつきながら、必死に言葉を絞り出した。
「誰にも言わないでください! 私のことも、伊東さんのことも……」
その必死さに、沖田は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに柔らかく笑った。
「言わないよ。言ったら面白くないでしょ」
「……面白くって……!」
思わず口をついて出た抗議に、沖田はくすりと笑う。
「冗談だよ。でもさ……伊東さんのこと、本当に土方さんにも言わなくていいの?次に襲われたとき、僕が助けられるとは限らないよ」
霧島は唇を噛み、肩で小さく息をついた。
「……これ以上、迷惑をかけたくないんです」
「そっか」
沖田は短く答えたが、その目はどこか心配げだった。
「でも、はじめ君には聞かれちゃったかもね」
霧島ははっとして顔を上げる。木陰から斎藤が静かに現れていた。
薄暗がりの中、冷たい瞳が霧島と沖田をじっと見つめる。
胸の奥がどきりと跳ね、霧島は思わず
「斎藤隊長……」
小さな声で名を呼ぶ。
斎藤は一歩前に出て、低く問いかける。
「何があったんだ、総司」
沖田は霧島の肩にそっと手を置いたまま、いつもの調子で答えた。
「ちょっと伊東さんと三人で会合してたんだ」
「会合?」
斎藤の声は低く、少し鋭い。
「僕のお悩み相談会みたいなものかな……ね、霧島くん」
沖田が悪戯っぽく笑ってこちらを見る。
霧島はうまく言葉が出ず、曖昧に頷くしかなかった。
斎藤はしばし二人を見つめ、やがて低く言った。
「そうは見えぬが……まあいい。霧島、顔色が悪い。部屋へ戻れ」
「……はい」
霧島はかすれた声で答える。
沖田は「部屋まで連れてくよ」と軽く言い、立ち上がった。
しかし斎藤は一歩踏み出して、霧島と沖田の間に入る。
「いい。俺が部屋まで送る」
沖田は一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに肩をすくめて笑った。
「じゃあお願い。僕はここでサボるとするよ」