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三番隊の剣士【薄桜鬼】

第6章 休息


「原田さんは……ご無事だったのですか」

霧島は膝の上で拳を握りしめ、斎藤の言葉を待った。

「ああ。だが、あの不知火という鬼は厄介だ。原田の槍を受けても、まるで意に介していなかったそうだ」

斎藤の声は淡々としているが、そこに含まれる緊張が霧島の胸に重くのしかかる。

「……そんな相手が、また来るとしたら」

霧島の言葉に、斎藤はゆっくりと視線を向けた。

「来るだろうな。だが――次は俺が斬る」

低い声が部屋の空気を震わせる。
霧島はその強さに胸を打たれ、同時に言い知れぬ安堵が広がった。

「……隊長」
「心配するな。お前はまだ療養中だ。俺のそばにいればいい」

斎藤はそう言うと、霧島の額にかかった髪を指先でそっと払った。
一瞬の触れ合いに霧島の息が止まる。

「……はい」

かすかに返事をすると、斎藤は満足げに目を細めた。

部屋の外では遠くで鳥の声が聞こえる。
穏やかな昼下がりだというのに、霧島の胸の鼓動だけが落ち着かず、熱を帯びたまま速さを増していった。

霧島は、払われた前髪の感触がまだ額に残っている気がして、思わず俯いた。
斎藤は何も言わず、ただ霧島の横顔を見つめている。

「……そんなに見られると、落ち着きません」

思わず漏れた声に、斎藤は小さく笑った。

「すまない。だが、こうしていると……ようやく安心できる」

霧島は顔を上げ、驚いたように斎藤を見た。
普段は決して表に出さない感情を、今は隠そうともしていない。

「……私の方こそ、です。隊長が隣にいてくださると……安心します」

静かに交わされる視線。

やがて斎藤はためらうように片手を伸ばし、霧島の髪に指先を置いた。
そのまま、そっと頭を撫でる。

霧島は一瞬驚いたが、逃げることなくその手に身を委ねた。

「……もう少し、こうしていてもいいか」

低く落ちる声に、霧島はかすかに頷く。

「……はい」

斎藤の指が髪を梳くたび、くすぐったいような、落ち着くような感覚が胸に広がっていく。
頭に置かれた手から伝わる体温は、じんわりと心まで温めるようだった。

沈黙は不思議と苦ではなく、むしろ心地よい。

霧島はそっと目を閉じ、斎藤の手の動きに意識を預けながら、胸の鼓動が早まるのを抑えられなかった。
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