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三番隊の剣士【薄桜鬼】

第6章 休息



斎藤の手が髪から離れると、霧島は少し名残惜しそうに瞬きをした。
だが、斎藤は間を置かず霧島の額に手を添え、指先でそっと熱を確かめる。

「……熱はないな。顔が赤いのは、日差しか?」
「……いえ、その……」

言葉が詰まり、霧島は視線を落とす。

斎藤はわずかに目を細め、霧島の反応を確かめるようにしばらく見つめていたが、やがて短く告げる。

「……なら、いい」

その一言とともに、斎藤は布団の端に腰をかけ直した。
そして、もう一度霧島の頭に手を置く。

今度は先ほどよりもゆっくり、丁寧に撫でた。

「……本当に、生きていてくれてよかった」

ささやくような声だったが、その響きには熱がこもっていた。
霧島の胸がぎゅっと締めつけられ、思わず小さく呟く。

「……もう、あんな無茶はしません」
「言葉だけじゃ足りん」

斎藤の指先が、霧島の髪をそっとかき分ける。
声は低く、しかし押し殺した感情が滲んでいた。

「次に同じことがあれば……俺は、たぶん冷静ではいられん」

霧島ははっとして顔を上げた。
斎藤の横顔は穏やかだったが、その奥に潜む鋭い光が胸を打つ。

「だから、ちゃんと生き延びろ」
「……はい」

短く答えた声は、自分でも驚くほど強い響きを帯びていた。

「そろそろ行く。あんたも腹が減っただろう。飯を持ってくる」

斎藤が立ち上がろうとしたその瞬間、霧島は思わず袖をつかんだ。

「……もう少しだけ、いいですか」

袖を握る手は離れず、霧島の頬は赤いままだった。
斎藤は少し驚いたように振り返る。

「……離したくないのか」

こくんと小さく頷く。
斎藤はゆっくりと腰を下ろし直し、霧島の手を包み込むように握った。

「……隊長の手、こんなにあたたかかったんですね」
「そうか」
「ええ……落ち着きます」

斎藤はわずかに目を細め、霧島の肩に寄り添うように座り直した。
衣擦れの音がかすかに響き、互いの距離がさらに近づく。

胸の鼓動が早まるのを感じながらも、霧島は逃げようと思わなかった。
むしろ、この時間が少しでも長く続けばいいと願う。

斎藤は霧島の手を握ったまま、もう片方の手でそっと頭を撫でた。
まるでその存在を確かめるように、ゆっくりと、優しく。

外から聞こえる夕餉の支度の声が、今は遠くの世界のことのように思えた。二人の間には、静かであたたかな時間だけが流れていた。
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