第6章 休息
部屋に戻ると、霧島はそっと布団に腰を下ろした。
「さぁ、夕餉まで休め。無理はするな」
「はい」
返事はしたものの、ここ数日ほとんど眠ってばかりだったせいか、体は疲れているはずなのに不思議と眠気は訪れない。
「退屈か?」
斎藤の声に、霧島は少し肩をすくめた。
「寝てばかりだったもので……すみません」
「そうか」
斎藤は軽くうなずき、布団の端に腰を下ろす。
その存在が近くにあるだけで、霧島の胸は不思議と落ち着きながらも、微かな緊張が走った。手元の布団にそっと指先を置き、自然と視線が斎藤に向かう。
「……せっかくだ。話でもするか」
斎藤の問いに、霧島は一瞬目を見開く。
「……話、ですか?」
声はかすかに震えたが、胸の奥に心地よい緊張が広がる。
斎藤はわずかに唇の端を上げ、静かに頷いた。
「無理に話す必要はない。座っているだけでもいい。お前が退屈しないようにな」
霧島は小さく息をつき、斎藤の隣に座り直した。
昼下がりの柔らかな光が二人の間に差し込み、穏やかな沈黙がゆっくりと流れる。
「……最近の屯所、どうでしたか?」
思わず口を開くと、斎藤は少し驚いたように眉を上げた。
「最近、か……いつも通りだ。だが、あんたのいない稽古や巡察は、どうにも物足りなかった」
その言葉に、霧島の心臓が跳ねる。
「……物足りなかった、ですか?」
「ああ。だから、早く戻ってきてほしい」
霧島は自然と笑みをこぼし、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
「……そう言っていただけると、嬉しいです」
斎藤は何も言わず、霧島の隣で背筋を伸ばしたまま座る。
昼下がりの光が二人の輪郭を柔らかく照らし、霧島の視界には彼の穏やかな横顔が映った。
「……池田屋でのこと、聞いてもいいですか」
「ああ」
沖田が血を吐いて倒れたこと、藤堂の額が割られていたこと、そして鬼の存在――。
斎藤は池田屋での出来事を淡々と、しかし隠さず霧島に語って聞かせた。
「鬼……」
「あんたに弾丸を撃ち込んだのも、恐らくその一人だろう」
「不知火……と名乗っておりました」
霧島はあの日の痛みを思い出しながら答える。
「私が女だと気づいて、見逃した」
斎藤の目がわずかに細められる。
「……奴は逃げたあと、原田と対峙したらしい」
その声音には、静かな怒りと警戒の色が混じっていた。
