第6章 休息
ふたりとも無言のまま廊下を歩く。
霧島は斎藤の背に視線を落としながら、胸の奥でそっと呟く。
(……もっと、強くならなきゃ)
その決意は、庭に出る前よりもずっとはっきりしていた。
斎藤に心配をかけたくない。
もう二度と、あんなふうに彼を不安にさせたくない――そう心に決めたその時だった。
「おーい!霧島!」
廊下の先から元気な声が飛んだ。藤堂だ。
その後ろから原田と永倉、さらには雪村まで顔を出す。
「おお、ほんとに歩いてる!よかったな!」
藤堂が駆け寄り、霧島の肩をぱっと叩く。
「……いっ!」
霧島は思わず顔をしかめる。
「おい、平助。まだ全快じゃねぇんだから」
原田が藤堂の頭を軽くはたく。
「悪ぃ、そういやはじめ君がずっとつきっきりだったって聞いたんだけど、なんか前より仲が深まったんじゃねーの?」
藤堂の言葉に、霧島の耳まで真っ赤に染まった。
「見て、左之さん!耳まで赤い!これ完全に――」
――その瞬間、廊下の空気が凍りついた。
「……それ以上言うなら、今ここで斬る」
斎藤の低く冷たい声が落ちる。
藤堂と原田は同時に背筋を伸ばし、思わずピシッと敬礼する。
「す、すんませんでした!!」
藤堂が慌てて下がる。原田も苦笑いしながら手をひらひらさせる。
「いやー、冗談だって、な?新八!」
「俺に振るな。自業自得だろ」
永倉は肩をすくめ、雪村はくすくすと笑う。
「……本当に皆さんのお陰です」
霧島は微笑む。
「なぁ、後で快気祝いに酒持って行ってやるよ!部屋で飲もうぜ!」
藤堂が言うと、斎藤がギロリと睨む。
「ひええ……!」
藤堂は青ざめながら、霧島に小声で「お大事にね!」と手を振り、四人は去っていった。
廊下に再び静寂が戻る。
霧島は思わず顔を上げて斎藤を見、思わず吹き出してしまった。
「……笑うな」
斎藤がぼそりと呟く。
「すみません、でも……なんだか、元気出ました」
頬はまだ熱いままだが、霧島の胸の奥は不思議と軽くなっていた。
次に会うときは、あの二人にちょっとやり返せるくらい元気でいたい――
そう思いながら、霧島は斎藤とともに部屋へと戻っていった。