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三番隊の剣士【薄桜鬼】

第6章 休息


霧島は斎藤に手を引かれ、ゆっくりと中庭へと歩み出した。

砂利を踏むたびに、しゃり、しゃりと柔らかな音が響く。
昼下がりの陽射しは穏やかで、木々の枝葉が作るまだらな影が地面に揺れていた。

縁側の下から、どこから迷い込んだのか一匹の猫が現れ、にゃあと鳴いて斎藤の足元に擦り寄る。

「……ふふ、可愛い。隊長、動物に好かれるんですね」

「飯の匂いでもしたのだろう、たまたまだ」

斎藤は猫の頭をひと撫でし、再び霧島に視線を向けた。

「痛みはどうだ」

「……少しはあります。でも、歩けるくらいには」

「無理はするな。転んで傷が開いたら、松本先生に怒鳴られるのは俺だからな」

淡々とした声に、冗談めいた響きが混じる。
霧島は思わず小さく笑った。

「隊長でも、怒られるんですね」

「当たり前だ。あの先生は誰にでも容赦がない」

そう言った斎藤の口元が、かすかに緩んだ。
その穏やかな笑みを見た瞬間、霧島の胸にふっと温かい風が吹き込んだ気がした。

庭を一周し、縁側の近くまで戻ると、斎藤は足を止めて霧島に向き直る。
昼下がりの光が彼の横顔を照らし、いつもよりも柔らかく見えた。

「……あんたが生きていてくれて、本当に良かったと思う」

ぽつりと落ちた言葉に、霧島の心臓が跳ねる。

「え……?」

「あんたが倒れたと聞いたとき、血の気が引いた。間に合わなければどうしようかと……頭が真っ白になった」

淡々と告げられる言葉とは裏腹に、斎藤の瞳には熱が宿っている。

その視線がまっすぐ自分に向けられていると気づいた瞬間、霧島の胸がじんわりと熱を帯びた。

「だが、こうして今、生きて外を歩いている。……それが嬉しい。だから早く、元気になってくれ」

霧島は喉が詰まり、しばらく声が出なかった。
胸の奥で何かがほどけるような感覚がして、ようやく小さな声で答える。

「……ありがとうございます」

斎藤は何も言わず、霧島の手を離さないままもう一度歩き出す。
沈黙が続くが、不思議と重さはなく、むしろ心が澄んでいくようだった。

昼下がりの風が頬を撫で、木々のざわめきが遠くで響く。

霧島は、斎藤と並んで歩いているというだけで、不思議なほど心が落ち着いていくのを感じていた。
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