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三番隊の剣士【薄桜鬼】

第5章 池田屋


♦︎♢♦︎

深い闇の中。

どれほど彷徨っていたのだろうか。

体の芯に鈍い痛みが走り、意識がゆっくりと水面へ浮かび上がる。

「……っ」

かすかな声と共に、目の前に斎藤の顔がぼんやりと浮かんだ。
眠っていた間に、どれだけ時間が過ぎたのか分からない。

呼吸を整えようとするだけで、脇腹の傷が鋭く痛む。

部屋の蝋燭が小さく揺れ、壁に長い影を落としている。
外はもう夜なのだろう。

「目を覚ましたか、霧島」

聞き覚えのある低い声。

その声はいつもよりどこか柔らかく、霧島の胸にじんわりと温かさを広げた。

「……隊長」

かすれた声が震える。

体をわずかに動かしただけで、痛みが胸に突き抜けた。

視線を落とすと、包帯で覆われた脇腹が目に入る。

「まだ休んでおけ。傷が開くぞ」

穏やかに響いた声が、逆に霧島の心をざわつかせた。
どうしてこんなにも胸が熱くなるのか、自分でも分からない。

「あの、隊長、私は……」

「池田屋で弾丸を食らって倒れていた」

斎藤の言葉は短い。
だがその視線は霧島の奥底まで届くように鋭く、それでいてどこか温かさを帯びていた。

戦場の厳しさだけではない、別の感情がそこに潜んでいる気がしてならない。

胸に後悔と罪悪感が押し寄せる。

「迷惑かけて……申し訳ございません」

声は震え、涙が滲みそうになる。

斎藤は何も言わず、霧島の額に手を置いた。

ひやりとした感触が、逆に心の奥をぎゅっと掴む。

「皆で戦場に出て、誰にも迷惑をかけずに帰ることなどできん。命があるだけで、俺は安堵している」

淡々とした声なのに、不思議と優しさを含んでいた。
その温度に、霧島の胸が小さく高鳴る。

「……でも、私がもっと強ければ……!」

吐き出す声はか細く震え、悔しさが混じる。
斎藤は黙したまま包帯を巻き直し、低く告げた。

「まずは生きろ。生きて、次に備えるんだ」

その言葉に霧島は深く頷いた。

体は重く、痛みは鋭い。
だが心の奥に、小さな炎が再び灯る。

それは戦う意志、仲間を守る決意――。

そして、斎藤という存在を強く意識してしまう感情だった。

「……はい、隊長」

かすかに震えていた声に、力が戻る。

斎藤の瞳が、優しくも厳しく霧島を見据えていた。

その視線に、霧島は守られている安心感と、芽生えたばかりの淡い想いが重なるのを感じた。
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