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三番隊の剣士【薄桜鬼】

第5章 池田屋


鋭い風切り音。
不知火の頬に赤い筋が走った。

「ほう……!」

男の笑みが一瞬だけ深くなる。

次の瞬間、彼は地を蹴って前に出た。
銃口で霧島の刃を押し上げ、空いた左手で拳を突き出す。

霧島は咄嗟に身をひねり、拳をかわす。

畳に足を取られそうになりながらも、体勢を立て直し、刀を返して斬り下ろした。

ギンッ――!

火花が散る。

刃と銃身が真上でぶつかり合い、二人の顔が至近距離で睨み合った。
霧島の額から滴った汗が、不知火の頬の血と混じり、じわりと畳に落ちる。

「悪くねぇ……だが、そろそろ終いにしようか」

不知火が口角を上げた瞬間、銃口が霧島の脇腹に押し当てられた。

ぱん――!

轟音と閃光がほぼ同時に霧島を包んだ。

「――っ!」

焼けるような熱さと鋭い痛みが脇腹を貫き、体が勝手に仰け反る。
呼吸が止まり、刀が手から滑り落ちそうになる。

不知火はその様子を見て、ひゅーっと口笛を吹いた。

「立ってんのがやっとって顔だな……。だが死んじゃいねぇ、まだやるか?」

霧島は膝をつきかけながらも、震える手で刀を握り直す。
喉から血の味が広がる中、唇を歪めて吐き捨てた。

「……まだ……終わってねぇ……!」

再び構えを取る霧島を、不知火は興味深そうに眺める。
その視線は挑発的というより、どこか観察するようだった。

「……なるほどな」

ぽつりと呟いた不知火の目が細められる。

「さっきから妙に気になってたが――あんた、体格が軽いな」

霧島の肩がわずかに揺れる。

「剣筋も細ぇ。腕は確かだが、……女だろ?」

「……!?」

胸の奥に冷たい針を刺されたようだった。

女であることを隠し、男としてここまで戦ってきた。

男達と肩を並べ、復讐を遂げるために――。

「新選組は女にまで加勢してもらわなきゃ、人手不足ってか」

不知火はけけけと笑い、

「女相手に弾撃ち込んで悪かったな。じゃあな」

言うが早いか、窓枠を蹴ってひらりと飛び降りた。

その背中が視界から消えるまで、霧島はただ息を荒げたまま立ち尽くすしかなかった。

女だから見逃された――。

それが何よりも屈辱だった。

悔しさが胸を焼き、脇腹の痛みがさらに強まる。
歯を食いしばった瞬間、視界が揺れ、世界が暗転した。

霧島は畳に崩れ落ち、意識を手放した。
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