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三番隊の剣士【薄桜鬼】

第5章 池田屋


「なんだ、新選組か」

闇の奥から姿を現したのは、首に胆礬色のスカーフを巻き、逞しい腕に刺青を刻んだ男だった。

灯りに照らされた顔には、まるで戦場を楽しむかのような薄笑いが浮かんでいる。

霧島は黙ったまま刀を構え直した。
喉の奥がかすかに鳴る音が、自分にもはっきり聞こえる。

「ここまで来たんなら、相当腕の立つと見えるな……あんた、名前は?」

その声は妙に軽やかで、恐怖の影が一切ない。
霧島は短く吐き捨てるように言った。

「……貴様に名乗る名など無い」

「そうかそうか、そりゃ残念だ。俺は不知火匡ってんだ」

男は肩をすくめ、どこか飄々と笑う。

霧島は目を細める。

「……あんた、長州の人間か」

「まぁ、そんなとこだな」

「ならば――斬る!」

霧島は畳を蹴り、一気に間合いを詰めた。

刀が唸りを上げる――が、甲高い金属音が響き、刃は止められた。

「っ――!」

不知火が片手で構えたピストルの銃身が、刀をがっちりと受け止めている。

霧島の頬を冷や汗が伝った。

「長州の人間だからって、無差別に殺すってのはいけ好かねぇな」

不知火は口の端を上げ、まるで稽古の相手をするかのように軽く言った。

(銃で……刀を止めやがった……!)

刀と銃身が押し合い、軋む音が部屋に響く。
霧島は渾身の力で斬り込もうとするが、不知火の腕は岩のように動かない。

「さぁ、どうする? 新選組」

挑発的な声が鼓膜を打ち、霧島の血が沸き立った。
飛び道具相手に刀は不利――それでも退く気は毛頭ない。

霧島は歯を食いしばり、再び踏み込む。
一瞬の手応え――不知火の前髪の先端が切先に触れ、ふわりと落ちた。

「へぇ、なかなかやるじゃねぇか」

不知火の瞳が愉悦に細まり、次の瞬間には拳銃が振り下ろされる。
霧島はとっさに刀で受け、火花が散った。

霧島は呼吸を整える間もなく、踏み込み直した。

不知火のピストルが再び閃き、金属と金属がぶつかる甲高い音が室内に響く。

「ちっ……!」

火花が散り、霧島は刀を弾かれながらも体勢を崩さずに横薙ぎを放った。

不知火は半身になってかわし、すれ違いざまに逆手で拳銃のグリップを振り下ろす。

鈍い衝撃が肩に走り、霧島の腕が一瞬しびれた。
だが歯を食いしばり、もう一歩踏み込んで突きを放つ。
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