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三番隊の剣士【薄桜鬼】

第1章 剣士


霧島はゆっくりと両手で木刀を握り、腰を落として構えを取った。

足はしっかりと踏み込み、肩の力を抜きつつも背筋はまっすぐに伸びている。木刀の先端は斎藤の胸元をかすめるかのように水平に向けられ、その姿勢だけで覚悟と決意が伝わる。

斎藤は相変わらず無言のまま、霧島の動きをじっと見据えている。
隊士たちは息を潜め、二人の間に流れる緊張の糸に身を委ねていた。

霧島の手に伝わる木刀の重み、床板の感触、そして斎藤の視線――
それらがすべて一つの世界として意識を支配していた。

霧島は僅かに目を細め、次の瞬間に訪れる斎藤の動きに集中した。
心の奥で、覚悟が一層熱く燃え上がる。


刹那。

斎藤の木刀が鋭く振り下ろされる。
床に響く打撃音はないが、その威圧は霧島の肩を震わせた。

霧島は瞬時に腰を落とし、足を一歩後ろに引く。
木刀を微妙に傾け、斎藤の刃先をかすめるようにかわす。
その動きは無駄がなく、しかし緊張のあまり体中に汗が滲む。

斎藤は言葉を発さず、ただ霧島の反応を見据えている。
霧島は床板の冷たさと木刀の手応えを感じ、次の一撃に備え、呼吸を整えた。

隊士たちは一瞬息を呑み、空気が張りつめる。
霧島の目には、己の胆力と身体がひとつになった感覚があった。
「受け流す」――それは単なる技ではなく、命を預け合う覚悟の表れでもあった。


「かわした…」

「斎藤隊長の剣を…!」

隊士たちがざわめく。

その声すら、霧島の耳には届かない。
彼の視線はただ一点、斎藤の胸元に集中していた。

「ここだ――」

心の中で合図を送ると同時に、霧島は前足で強く踏み込み、霧島の木刀が斎藤に向かって突き出される。

「――ッ」

その先端を、斎藤は瞬時に受け止めた。

木刀同士がぶつかる鋭い音が、稽古場の空気を裂く。
だが斎藤は力任せにはせず、霧島の勢いを柔らかく受け流した。
腕の返し一つで、突きは横に弾かれ、霧島の体勢を崩さずに済んだ。

霧島は咄嗟に体勢を整える。
床の感触、木刀の手応え、斎藤の視線――すべてが一瞬のうちに意識に刻まれる。

無言のまま、斎藤は木刀を構え直す。
その静かな所作に、霧島は己の未熟さを痛感しつつも、同時に次の動きを決意した。

隊士たちは思わず息を呑む。
新参者が隊長に一撃を受け止め、流された――。それだけで、場の空気は微妙に変わった。
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