第4章 剣技
原田との木刀を下げ、霧島は軽く一礼した。
「ありがとうございました。いい稽古になりました」
原田は大きく肩を揺らして笑う。
「ありがとな。いやぁ、久々に良い汗かいたぜ。お前、もっと腕自慢とやりあってもいいんじゃねぇか?」
廊下の柱に寄りかかっていた永倉が、にやりと笑みを見せる。
「見事だったな。霧島、やるじゃねぇか。お前なら試衛館の稽古でも十分通じるぜ」
藤堂は雪村の肩をぽんと叩いた。
「な、見ただろ千鶴。霧島の太刀筋、無駄がねぇんだ。あんな動きが出来るようになれば一人前だ」
雪村はまだ肩で息をしながらも、目を輝かせて頷く。
「はい……すごかったです。勉強になります」
霧島は雪村へ穏やかに微笑んだ。
「焦る必要はありません。今日の一歩が、きっと明日へ繋がります。明日もまた一緒にやりましょう」
「稽古の後は腹が減るな、だんごでも買ってくるか?」
原田が手拭いで汗を拭いながら笑う。
永倉も楽しげに声を上げた。
「いいな、それ。俺は酒も欲しいとこだが……まあ屯所じゃ我慢だな」
「じゃあ俺、台所から漬物でも持ってくる!」
藤堂が弾む声で言い、足早に廊下の奥へ走っていく。
雪村はくすっと笑みをこぼし、霧島のほうへ顔を向けた。
「霧島さん、本当にありがとうございました。もっと上手になりたいです」
霧島は木刀を納め、静かに頷く。
「こちらこそ、ありがとうございました」
汗の匂いがまだ中庭に漂い、杉の葉を揺らす風がそれを和らげる。
稽古の余韻がそこに残り、心地よい疲労感が隊士たちの胸を満たしていた。
それは剣を交えた者だけが知る、静かな連帯感であった。