第4章 剣技
藤堂は足を小さく開き、腰を落とした。
「霧島、遠慮すんなよ。全力でいくぞ!」
霧島は静かに頷き、正眼に構える。
「心得ました。打ち込みは型を守ってくださいね」
「へいへい、分かってるって!」
杉の葉が揺れると同時に、藤堂が砂利を蹴った。
素早い踏み込み――。
だが、永倉ほどの重さはなく、しなやかな速さがある。
霧島は木刀をわずかにずらし、相手の刃筋を受け止めた。
カァン、と甲高い音が響く。
「悪くないねぇ、もう一本!」
藤堂は笑みを浮かべ、横薙ぎを繰り出す。
霧島は後ろ足を滑らせ、相手の死角へ身体を半歩ずらしながら打ち返す。木刀同士が二度三度と弾け、庭にリズムを刻んだ。
「やるじゃねぇか霧島!新ぱっつぁんの動きよりずっとやりにくい!」
藤堂の額に汗が浮かび、楽しげな声が上がる。
「そちらこそ、柔らかい剣ですね。まだまだ学ぶことが多い」
霧島の返しに、藤堂は肩で笑った。
「いい勉強になるな! ――っと、これ以上やったら夕刻の稽古が持たねぇ」
藤堂は木刀を引き、息を整えながら下がる。
原田が待ちきれずに砂利を踏み鳴らした。
「さて、次は俺の番だな。霧島、構えを崩すなよ!」
「こちらこそ、お願いします」
霧島は深呼吸し、握りを整える。
原田はにやりと笑い、大きな体をぐっと前に乗り出した。
「手加減はしねぇぞ、半分くらいは本気だ!」
「それでも受けて立ちます」
瞬間、原田の足が地を蹴り、身体が信じられぬ速さで間を詰める。
振り下ろされる木刀の軌道は重く速い。霧島は両腕に力を込め、辛うじて受け止めた。
ドン、と砂利が跳ね、腕に鈍い衝撃が走る。
「おぉ、受けたか!やっぱりやるな、霧島!」
原田はさらに踏み込み、二の太刀を叩き込む。
霧島は軸足を返して受け流し、呼吸を合わせて反撃の切先を突き上げる。
木刀がぶつかり合うたび、空気が震えるように響き、中庭の緊張が高まった。
「面白ぇな!こんな動きの新入り、久しぶりだ!」
霧島も腕の痺れを感じながら、目は真っすぐに原田を捉えていた。
「まだまだ、終わりませんよ!」
木刀の音が響き合い、砂利が舞う。
原田の豪放な打ち込みに、霧島は冷静に間合いを計り、確実に捌いていく――。