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三番隊の剣士【薄桜鬼】

第4章 剣技


数刻のあいだ、二人はひたすら同じ動きを繰り返した。

砂利を踏む足音と木刀が風を裂く音だけが、中庭に淡々と積み重なっていく。

霧島は木刀を軽く下ろし、呼吸を整えながら雪村を見やった。

「……形は掴めて来ましたね。そろそろ一対一で、動きを試してみましょうか?」

雪村は肩で息をしながらも、嬉しそうに頷いた。

「はい、お願いします!」

霧島は中庭の中央へ二歩進み、木刀を正眼に構える。

「立会いといっても本気で打ち合うわけじゃない。型を崩さず、間を読む練習です。力まず打ち込んで来てください」

「はい!」

雪村の返事は先ほどより力強い。
両足をしっかり砂利に沈め、木刀を構える。

杉の枝を渡る風が一瞬止み、場が静まり返る。

霧島はわずかに腰を落とし、相手の呼吸を読む。雪村の指先が小さく震えている――緊張はしているが、本気だ。

「行きます!」

短く告げた雪村が木刀を振り下ろし、カン、と乾いた音が中庭に響く。

「良いですね」

霧島は声をかけ、角度を示すように木刀で軽く雪村の肘を押す。

「腕じゃなく腰から――もう一度」

「はいっ!」

雪村が気合を入れ、再び踏み込む。

二人の木刀が交わる音が、規則正しく庭に響き始めた。汗が額を伝い、呼吸は速まる。それでも雪村の目には迷いがなく、霧島もその成長を感じながら次の動きを導く。

乾いた木刀の音が幾度か響いたころ。
廊下の方から明るい声が飛んできた。

「おお、稽古やってんのか?」

振り向くと、原田左之助が腕を組み、笑みを浮かべながら立っている。
その肩越しには永倉新八と藤堂平助の姿もあった。

「霧島と千鶴なんて珍しいな」

原田が大股で砂利を踏みしめ中庭に入ってくる。永倉は顎をさすりながら、面白そうに二人を眺めた。

「霧島、千鶴ちゃんのこと痛ぶってるんじゃないだろうな?」

その冗談に、藤堂が慌てて口を挟む。

「おい霧島!そんなことしたら許さねぇぞ!」

「皆さん違います!私から剣を教えてくださいとお願いしたんです!」

雪村が慌てて三人に向き直り、声を張る。

雪村の必死な弁解に、原田が頭をかきながら笑った。

「なんだ、そういうことか」

永倉も頬を緩め、にっと笑った。

「よし、それなら俺も見てやるか。霧島だけじゃ飽きるだろ?」

藤堂はもう中庭へ飛び降り、砂利を蹴って立ち位置を確かめている。
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