• テキストサイズ

三番隊の剣士【薄桜鬼】

第3章 信頼


布団に身を沈めた霧島は、温もりに包まれながらも、心のざわめきが完全には消えていないことに気づいた。

雪村との廊下での短い会話、柔らかな声、そして視線――
それらが胸の奥に、小さくも確かに残っていた。

(……こんなにも、穏やかな気持ちになるなんて)

日中の訓練や初めての隊士たちとの顔合わせの緊張が、今になってじわりと押し寄せる。

だが布団に身を沈め、一息つくと、その緊張も少しずつ和らいでいった。

夜の静けさの中、霧島は目を閉じ、今日一日の出来事を思い返す。

斎藤組長との稽古、幹部たちとの宴会、そして雪村との廊下でのやり取り――。

その一つ一つが、胸に重くも温かい刻印を残していた。

――そのとき、戸の向こうから微かな足音が聞こえた。

霧島は咄嗟に体を起こし、耳を澄ます。
音は部屋の奥へ近づき、やがて襖がそっと開かれた。

「……霧島、起きているか」

低く静かな声に、霧島の心臓が跳ねた。

「斎藤隊長」

「入るぞ」

襖の向こうから斎藤がゆったりと部屋に入ってくる。
霧島は自然と頭を下げた。

斎藤は布団の脇に腰を下ろし、ゆっくりと息をつく。

「遅くなった。宴会はまだ続いているが、俺はここで休むことにする」

「あの、私みたいな平隊士と同室で、よかったんですか」

「女子のあんたを、男ばかりの寝床に押し込むわけにはいかぬ」

霧島は斎藤の気遣いに、胸がじんと熱くなる。

黙って頷き、布団の中で身体を少し丸めた。

目の端で斎藤の動きを追う。

厳しい隊長の姿とは違い、今はただ静かに、同じ空間にいる――。
それだけで心が少しだけ落ち着いた。

「……霧島」

斎藤の低く落ち着いた声が、寝る前の静けさをそっと破る。

「はい」

霧島は息を整え、答える。

「明日も、しっかり働くことだ」

その言葉には命令ではなく、穏やかな気遣いが含まれていた。

霧島は小さく息を吸い、布団の中で身体を沈める。

(……誓おう。隊長に恥じぬように、そして自分自身にも――)

部屋に静寂が戻る。

斎藤の存在がそばにあることが、安心と決意を同時に霧島に与えていた。

やがて瞼が重くなり、夜気の冷たさと布団の温もりが交錯する中、霧島は深い眠りに落ちていった。
/ 121ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp